砂漠といっても雨は降る。1年のうちほんのわずかではあっても完全に乾ききっているわけでもないし、ごくまれには激しい豪雨となることもある。そんなとき、一次的に川が復活し、池も生まれる。一部の生物はほとんど乾きながらも死んでおらず、この機を逃さず復活し、短期間で次の世代を残していく。まさに命の水といってもいいだろう。
だが、中にはこの雨で不幸になる者もいる。例えば今、激流の真ん中に突き出た岩場にいる幼いパラの少女もその一人だろう。
不運はいくつか重なっていた。一つ目は一族の長が体調を崩し、代理の者が指揮をしていたこと。彼は長の体調を気遣うあまりに日差しの届きにくい谷間を通るコースを選んでいた。二つ目は一族が谷を移動中にたまたま雨にあったこと。もっとも一族のあたりでは小降り程度で、彼らはかえって喜んで水を溜めるために進行を停止し、ついでにキャンプを張っていた。そして最後の不運は、上流では豪雨となっていたことだ。激しく降った雨の流れは細いものから、次第に集まって太くなっていき、一番低い場所・・・谷間に集まったころには激流となった。
もっとも少女は一族の他の者より、少しだけ運が残っていた。なすすべも無く流された一族の中で、叩きつけられることも無く岩場に転がりあがったのは彼女一人だけであった。しかし今の彼女にはそれを幸運と思うほどの余裕はない。ただ一人岩場に残され、周りは激しい流れで移動することも出来ない。既に日は暮れつつあり、水に濡れた衣服は体温を奪っていく。体力も精神力も尽きかけ、薄れる意識の中で見た巨大な影を天国からの神の使いと思いながら、少女は意識を失った。
少女が意識を取り戻したのは豪華な屋敷の一室だった。そこが天国でないと少女が理解するまでにしばらくかかるほどであったが、そこは地上であり、とある竜騎士の館であった。彼が領地を回っている最中に川が増水したということを聞き、調査に行ったところで「上流から流れてきたもの」を見つけて上流の捜索に向かったのだという。ただ、何が流れてきたかについては彼は語ろうとしなかった。
一族を失った少女は、結局その竜騎士に引き取られることとなった。弱者救済は「竜騎士として当然のこと」と言われたが少女にとっては非常に驚く出来事であり、それ以降は竜騎士というものがどんなものなのかに非常な興味を持つことになった。
もう一つ少女が興味を示したのはドラグーンであった。「神の使い」が人の操るものであるのを知った時から「自分でも乗ってみたい」という気持ちは強くなるばかりであり、竜騎士の生き方を知るだけではなく、実践をするようになる。
数年の後、少女も成人と認められる年齢となり、同時に竜騎士の地位を手に入れることになる。実際の領地運営は養父の元で実務を担当していた執事が行っているものの、領主である。もっとも自身が未熟さを痛感しており、何か手柄をと思うのも仕方がないことであろう。
そして砂航船モルフェナスによるムゥ探索が発表された時、彼女、ロッコ・ハン・ダースの名前も探索隊の名簿に含まれていた。
え〜、交流誌で「PR書かないの」と訊かれて「今のところ特に追加するところはないよなぁ」と思いながらも、自由設定を元に膨らませたのがこれです。自分がPR書こうという時は、もともとのイメージに対して違った描写となってしまった場合にそれを補完する為にというのが多いんですよね。
執筆にあたって制限としたのが「セリフ無し」。まあ幼い女の子の口調を書くという自信がなかったのも事実ですが、本人以外の設定を何も考えていなかったので会話が出来ないというのも確かですね。普段のプレイングなどはPC口調で書いているんですが。