星辰の刻≪せいしんのとき≫
星って、こんなに沢山あったんだな・・・
夜空を見上げて、つくづく思う。
淡い紺の空一面に広がる幾千幾億もの煌き。見渡す限り、途切れる事なく夜空に星は瞬いている。
未来の地球の荒れた大地に腰を下ろして夜空を見上げたとき、その星の煌きに驚いた。周囲に人工の明かりのない、漆黒の闇を照らす星の輝き・・・その瞬間まで、これほど星空が明るいと感じたことはなかったかもしれない。見知った星座を探してみようと思ったが、それすら適わないほどにに空は星で埋め尽くされていた。
考えてみれば、この星空は過去自分の頭上にも輝いていたのだ。ただ・・・気が付かなかっただけで。
星はいつでも、そこにあった。
自分は一体どれくらい時を越えたのだろう。自分のいた時代に瞬いていた星は今でもこの星空のどこかで輝いているのだろうか。
いや、星にしてみれば自分たちが飛び越えてしまった時間などほんの一瞬きに過ぎないのかもしれない。
「・・・なあなあ、ヴィレッタ隊長。この星・・・アヤやライや・・・レビも見てるかな?」
「星?」
「ああ。今見てる星の光って何万年の前のものなんだろ?だったら・・・今俺達が見ている星の光は・・・」
「・・・そうかもしれないわね。この星の光は・・・ひょっとしたら・・・・」
「・・・きっと、どこかにあるよな」
「・・・過去の輝きを放つ星が・・・か?」
「いいや、ちゃんと帰って・・・もういっぺん、みんなで見上げた、その瞬間に輝いてた星の光。絶対どこかにあるからさ」
必ず帰ろう。この星空のどこかにある、自分達と同じ時に輝いていた、その星の煌きの元に。
人間は、本当に何処ででも生きていける。荒れ果てたこの大地にも、人は力強く息づいている。
自分も、案外何処ででも生きて行けるのだろう。だが、自分が本当に自分として生きて行くべき場所は、たった一つの時代、たった一つの時間だけ。
『必ず帰るよ』
・・・みんなが待ってる場所へ・・・