日本語の綴り方ワザ教室
1.はじめに
小学校や中学校の国語の時間には作文や文法の時間がありますが、どこで読点を打ったらよいのか・どんな順番で言葉をならべたらよいのかは教わっているようで教わっていません。
これから、このプリントを使って、日本語の作文(綴り方)のワザが上達する手助けをしたいと思います。ただし、詩や小説という文芸的なものは、ここではあつかわないことにします。
2.読点(、)と句点(。)の打ち方
(1) まさる君は血まみれになって逃げ出したよしのぶ君を見た。
☆さて、血まみれになっていたのは、だれでしょうか。読点を一つ打ってみましょう。
「まさる君は血まみれになって、逃げ出したよしのぶ君を見た。」は、血を出したのはまさる君になります。
「まさる君は、血まみれになって逃げ出したよしのぶ君を見た。」は、血を出したのはよしのぶ君になります。
読点は文章の内容の切れ目で打ちます。また、そのまま文章が続いたときに内容が変わってしまったり、内容が分かりにくくなってしまったりする場合に打ちます。「ぼくは、」・「わたしは、」と主語の後に必ず読点を打つくせが、低学年のうちについてしまう人が多いようです。そうなると、読点の多い読みにくい文章を書くようになってしまいます。
(2) まさと君はどろぼうを追いかけた自転車が3台ならんでいた道路はせまかった
☆この文章には、句点を打って分かりやすくしてみましょう。
「まさと君はどろぼうを追いかけた。自転車が3台ならんでいた。道路はせまかった。」となります。句点は文章の終わりに打てばよいので、打つことはむずかしくありません。しかし、打たないと「追いかけた自転車が」とか「3台ならんでいた道路は」とかいうように、分かりにくい文章になってしまいます。
(3)@父は先生だ。 A父は、先生だ。
Bしかし彼女はあきらめなかった。 Cしかし、彼女はあきらめなかった。
☆それぞれ違いを比べてみましょう。
実際に声を出して読んでみると、イメージがわいてきます。読点を打った方は、「父」や「しかし」を強調した感じがすると思います。
この授業のもとになった『日本語の作文技術』(本田勝一著・朝日新聞社刊)を参考に、読点の意味をまとめると、
・必要のない読点は打たない。
「私は(、)花を(、)母にあげた。」
・言葉のならべ方が逆のときに打つ。
「姉が、私が気に入っている花を母にあげた。」
・二つ以上の文が続いたときのさかい目に打つ。
「私は母に花をあげ、姉にハンカチをあげた。」
・倒置文の述語の後に打つ。
「やはり姉か、私のおやつを食べたのは。」
・呼びかけ・応答・驚きの言葉などの後に打つ。
「あっ、しまった。」
・途中に入れた句の前に打つ。
「学校の先生、とくに体育の先生はきびしい先生が多い。」
となります。
3.ことばの順序
(1) 白い紙 横線の引かれた紙 厚手の紙
これらを一つにまとめて「紙」を表してみると、
@白い横線の引かれた厚手の紙
A厚手の白い横線の引かれた紙
B厚手の横線の引かれた白い紙
C白い厚手の横線の引かれた紙
D横線の引かれた白い厚手の紙
E横線の引かれた厚手の白い紙
というように、6とおりあります。
☆どの表し方が正確でしょうか。
@白い横線の引かれた厚手の紙…横線が白いことになってしまいます。
A厚手の白い横線の引かれた紙…これも@と同じ。
B厚手の横線の引かれた白い紙…横線が厚手のようになってしまいます。
C白い厚手の横線の引かれた紙…これもBと同じ。
D横線の引かれた白い厚手の紙…問題なし。
E横線の引かれた厚手の白い紙…問題なし。こちらの方がより正確になります。
(2) 速く走る 止まらずに走る ライトを消して走る
☆自動車が上のようにして走る場合、どの順番が正確でしょうか。
@速くライトを消して止まらずに走る。
A速く止まらずにライトを消して走る。
Bライトを消して速く止まらずに走る。
Cライトを消して止まらずに速く走る。
D止まらずに速くライトを消して走る。
E止まらずにライトを消して速く走る。
@速くライトを消して止まらずに走る。…ライトを消すのが速くとなってしまいます。
A速く止まらずにライトを消して走る。…止まらないことが速くとなってしまいます。
Bライトを消して速く止まらずに走る。…Aと同じ。
Cライトを消して止まらずに速く走る。…問題なし。
D止まらずに速くライトを消して走る。…@と同じ。
E止まらずにライトを消して速く走る。…止まらないでライトを消すのを行うという意味にもなってしまいます。
語句をならべる順序…長い語句を先に、短い語句を後にする。
(形容句・副詞句) (形容詞・副詞)
大きなことを先に、小さなことを後にする。
(大状況・重大なこと) (小状況・重大でないこと)
(3) 私は花子がけい子がころんだところを見たと思った。
☆この文章を分かりやすくならべかえてみましょう。
ころんだのはけい子、見たのは花子、思ったのは私です。このことをはっきりさせて、ならべかえると、「けい子がころんだところを花子が見たと私は思った。」となります。
(4) 明日は 私は たぶん 思った 大雨になるだろう
☆分かりやすい文章になるようにならべましょう。
「明日はたぶん大雨になるだろうと私は思った。」が分かりやすい順番です。学校の授業で教えられているのか、多くの人が「私は」を一番前にもってきます。その場合、主語と述語がなはれすぎて、私は大雨になるとかん違いされてしまいます。