たしざんってなんだ? 
                   年  組 名前           いままで、たしざんのけいさんのしかたについて、がくしゅうしてきました。きょうからは、たしざんのいみについて、かんがえてみたいとおもいます。
 
@おれたえんぴつが3本、おれていないえんぴつが2本あります。あわせてなん本ありますか。
〔しき〕  


 


こたえ        
 
Aライオンが1とう、しまうまが2とう、おりの中にいます。おりの中には、なんとういますか。
〔しき〕  


 


こたえ        
 
Bでんしんばしらが4本立っています。そのよこにくいが3本立っています。みんなでなん本ありますか。
〔しき〕  


 


こたえ        
 
Cオリックスのイチローせんしゅがポケットにえんぴつを2本入れて、ホームランを1本うちました。あわせてなん本ですか。
〔しき〕  


 


こたえ        
 
Dビルの2かいで、ボールを5かいつきました。あわせてなんかいですか。
〔しき〕  


 


こたえ        
 
Eおとうとは、しゅうじが2きゅうです。にいさんは、しゅうじが1きゅうです。ふたりでなんきゅうですか。
〔しき〕  


 


こたえ        
 
Fおとうさんは、33さいです。ぼくは、6さいです。ふたりでなんさいですか。
〔しき〕  


 


こたえ        
 
 
 さて、「たしざん」とは、どんなけいさんだとおもいますか。あなたのかんがえをかいてください。




 
 たしざんってなんだ? 
 授業に取り組む前に、この授業プランをお
読みください。
      授業プラン(2時間)                   
T:だれかプリントを読んでください。                
問題「@おれたえんぴつが3本、おれていな              
  いえんぴつが2本あります。あわせてな              
  ん本ありますか。」                       
T:では、プリントに書いてみてください。               
C:3+2=5 、どうですか。
T:みんな同じですか。今日は最後まで答は
  言わないからね。Aへ行くよ。
問題「Aライオンが1とう、しまうまが2と
  う、おりの中にいます。おりの中には、

 問題@は、深く考え
ないで、さらっと流し
ましょう。
 
  なんとういますか。」                      
C:1とう+2とう=3とう、どうですか。                 
C:違います。たせません。                     
T:そのわけを教えてくれる。                    
C:それぞれのおりに入っているから、合わ              
  せれないです。
T:おりが二つと考えたわけだね。
C:考えが変わりました。同じおりに入ると、
  しまうまが食べられちゃう。だから、た
  せません。

 こんな考え方もユニ
ークでおもしろいです
ね。
 
C:近くでも、けんかをするから、たせませ              
  ん。                              
C:ううん。困っちゃったなあ。ライオンが              
  おとなしくしていればたせるし、そうじゃ             
  ないとたせないし…。                      
T:なるほど。ここで、人数を調べてみよう              
  かな。話し合いをしているうちに、たせ              
  ないという人が増えてきたね。続いてB              
  へ行ってみようか。                       
問題「Bでんしんばしらが4本立っています。             
  そのよこにクイが3本立っています。み              
  んなでなん本ですか。」                     
C:4+3=7です。
C:大きいと小さいとで違うから、たせませ
  ん。
C:同じ棒なので、たせます。
C:大きさが違うから、区別がついてたせま
  せん。

 このように、たすも
のの質にこだわること
ができるようになって
ほしいと思います。
 
C:電信柱とクイは高さが違うけど、高さは              
  関係ないのでたせます。                     
C:大きさが違うから、たせるかたせないか、             
  分からなくなりました。                     
T:また、人数を調べてみようかな。けっこ              
  う、たせないという人がいるね。                 
問題「Cオリックスのイチローせんしゅがポ              
  ケットにえんぴつを2本入れて、ホーム              
  ランを1本うちました。あわせてなん本              
  ですか。」                           
T:さあ、考えて…。みんな、たっぷり悩ん              
  でちょうだい。今度は、教室の両側に分              
  かれてもらいます。ええと、「2+1              
  =3」という人は教室の南側へ、「たせ              
  ない」という人は北側へ行ってくれるか              
  な。                              
   さあ、今から対決に入ります。南の人、             
  少ないけど頑張って。                      
北:種類が違うから、たせないと思います。              
南:どちらも“本”がつくから、たせる。               
南:同じ“本”という漢字だから、たせます。
北:ホームランはバットで打つけど、鉛筆は
  字を書くからたせないです。
T:あれ、南の人、どうしたの。あっという
  間に対決が終わってしまったなあ。じゃ
  あ、Dへ行こう。
問題「Dビルの2かいで、ボールを5かいつ

 ここでは、たすとお
かしいなと、まずは感
覚的に感じてほしいで
すね。

 
  きました。あわせてなんかいですか。」              
T:みんな考えたかな。これも教室の南と北              
  に分かれてもらうよ。ヨ−イ、ドン。                
 (全員「たせない」の北へ行く。)                 
   これじゃあ、対決にならないなあ。で              
  も、どうしてたせないのか、わけを言っ              
  てもらおう。
C:ビルは四角で、ボールは丸だから、違う
  のでたせません。
C:ビルの2階は2階建の2階で、ボールは
  5回つくの5回だから、たせないでです。

 たすものの質が異な
るとたせないことに気
づいてほしいですね。
 
C:2階と5回は仲間じゃないから、たせな              
  い。                              
T:この問題は、みんな「たせない」という              
  ことでまとまったようだね。                   
問題「Eおとうとは、しゅうじが2きゅうで              
  す。にいさんは、しゅうじが1きゅうで              
  す。ふたりでなんきゅうですか。」                
T:たせますという人、手を挙げて…。みん              
  な、たせるというわけね。わけを教えて              
  ちょんまげ。                          
C:同じ仲間だから、たせる。                    
C:同じ級がつくから、たせます。                  
C:二つは同じだからです。                     
C:1級と2級は種類が同じだから、たせま              
  す。
T:たせないという人がいないから、その代
  わりに言うよ。そうするとね。1+2
  =3ということになるね。このたした答
  の3級って、どういういみかなあ。ふつ
  う習字というと、3級と2級とではどっ
  ちが上手なのかな。

 同じ質のものでも、
順序や等級を表すもの
は、たすとおかしくな
ることに気づいてほし
いですね。
 
C:1級や2級はうまいのに、3級だと下手              
  になっちゃう。                         
C:たすと、おかしい。                       
T:ちょっと、ヒントを出し過ぎたかな。               
  では次。                            
問題「Fおとうさんは、33さいです。ぼく              
  は、6さいです。ふたりでなんさいいで              
  すか。」                            
C:たすと、39才になってしまうから、た              
  せません。                           
C:年は年で同じだから、たせます。                 
C:たした39才は関係ないです。                  
C:年は種類が同じだから、たせると思いま              
  す。                              
C:子どもが39才だとすると、お父さんが              
  0才で赤ちゃんになっちゃう。                  
C:たせるという人に聞くけど、たした39              
  才ってどういう意味ですか。                   
T:どうも、たせないという人たちの方がリ
  ードしてるみたいね。いよいよ最後
  の問題ですぞ。
問題「Gさて、『たしざん』とは、どんなけ
  いさんだとおもいますか。あなたののか
  んがえをかいてください。」

 ここまでの段階で、
たし算ってどんな計算
だと思ったのか、まと
めてみましょう。
 
T:どういうときにたせないと思ったのか、              
  どういうときにたせると思ったのかを書              
  けばいいのです。頑張って話し合ったの              
  で、これを書いた人から休憩にしよう。              
 
 ・えんぴつとえんぴつはおなじものだから、たせる。でも、としと、としは、
 おんなじだけどたせません。
 
 ・かんけいするのがたせて、かんけいしないのがたせない。
 
 ・おなじのがたせて、ちがうのがたせない。
 
 ・べつべつのものがたせなくて、たかさや大きさがおなじだったら、たせると
 おもう。
 
 ・ふたつがちがうものだったら、たせない。
 
 ・たしざんとは、がっちゃんこするけいさんです。
 
T:では、答を言います。実は、@〜Bの問              
  題はインチキなんです。今までやってき              
  た文章題とよく似ているけど、何か抜か              
  してあるんです。さて、@の問題で考え              
  てみよう。
T:「あわせて」の前に、何かことばが入ら
  ないかな。
C:「えんぴつは」を入れると、鉛筆は鉛筆
  だから、たせます。

 「何を」合わせるの
かが、省略してあるわ
けです。
 
T:そのとおり。折れても、鉛筆は鉛筆だか              
  らね。Aの問題はどうかな。
C:「なんとういますか」の前に「どうぶつ
  は」を入れるとたせます。
T:ピンポ−ン。二つのものを同じ仲間にし
  てしまえば、いいわけです。Bの問題も、
  同じく仲間にできることばはあるかな。

 「動物」がライオン
・シマウマの上位概念
になり、たすことがで
きます。
 
C:電信柱とクイとで。                       
C:棒みたいなものは。                       
T:電信柱もクイも“棒みたいなもの”の仲              
  間と言えるね。Cの問題はどうかな。                
C:ホームランと鉛筆はだめだ。                   
T:そうね。話し合いでもあったように、打              
  つものと書くものは全然違うからね。D              
  はどう。習っていないけど、漢字を使っ              
  て式を書くとね、2階+5回となるわけ。             
C:漢字が違う。                          
T:漢字が違うということは、意味が…                
C:違う。                             
T:もし、たしても、7かいのかいは、どん              
  な漢字を使えばいいんだろう。だから、              
  C・Dはたすことはできないね。Eは同              
  じ級どうしだけれど、たしてみると3級              
  になって下手になってしまう。たしても、             
  意味がないということだ。Fも同じこと
  で、たした39才って何だろう。この問
  題の中で、39才の人いるかな。
C:いない。お化けの年だ。
T:これも、たしても意味がないということ

平均を出す過程で、序
数をたすことはありま
す。
 
  だね。「たしざんとはなんだ」をやってき              
  たけど、ひき算でも同じだよ。                  
たし算って分かっているようで分かってない
 この授業書では、たし算の合併だとか添加
だとかの構造以前の問題を取り上げてみまし
た。特に教科書の指導方針に従うと、立式の
ときに単位や助数詞を付けさせません。これ
は、かけ算という異質なものどうしをかける

合併…○○と△△とを
   あわせて
添加…○○に△△をく
   わえて
 
世界を知る2年生以降に矛盾がおこらないよ
うに、かけ算はたし算の簡便算として、累加
でかけ算を説明できるように、しくんである

累加…5+5+5=5×3
 
わけです。                             
 このように指導されてされてしまうと、か              
け算とたし算との世界の違いに気づくどころ              
か、たし算は同質のものを合併するという意
識にも欠けてしまいます。累加と累減という
 

累減…15÷3は-5を3回行う
 
考え方がもとになると、たし算とかけ算、ひ
き算とわり算が仲間の演算と勘違いをしてし
まいます。5年生になって、真小数・真分数
をかけると答えが減る・わると答えが増える
というところで、パニックを起こすことにな
ります。

たし算の逆算で、求残
(残りはいくつ)・求
差(違いはいくつ)が
ひき算。
 
 教育現場では、国語や算数といった教科の              
テストの点を平気でたしていますが、テスト              
の点も問題にしてもおもしろいですね。探し              
てみると、世の中にはおかしなたし算がまだ              
あるかもしれません。