ガリレオ戦争

 宇宙での食糧生産コロニーの利権を巡っての抗争が、宇宙暦224年5月1日。宇宙連邦軍の軍事衛星基地「ガリレオ」に対して統合軍が進撃を開始し、これに対して連邦軍も総力を挙げて艦隊を展開。両軍の激しい艦隊戦の末、新兵器ともいえるSA部隊を有効的に活用した連邦軍に勝利の軍配が揚がるが、宇宙基地「ガリレオ」は基地としての能力を失い、また統合軍は虎の子の宇宙艦隊が壊滅し、制宙権を失った。そして、連邦軍の地球圏全域に対する宇宙空間での核爆発により、地球上の電子機器は全て使用不能となった。

 連邦軍はガリレオを失ったことによる軍事バランスを補うため、統合軍の反撃に対して先手を打つ形で、地球への降下作戦を開始。統合軍は宇宙艦隊の壊滅によりこれを防ぐことができず、当時軍備が遅れていた地上軍も連邦軍降下部隊を阻止することができなかった。さらに先の宇宙空間における核爆発の電磁パルスの影響により、地上のほとんどの兵器が使用不能となっていたことが統合軍の敗退を助長することとなり、統合軍は各地で崩れていった。こうしてわずかな期間に統合側は南米、東欧、中央アジア、東アジアを失うこととなった。

 降下した連邦軍は地上での戦闘を有利に進め、各地で連戦連勝を繰り返した。唯一北アフリカで部隊が壊滅することをのぞいて、地球での主導権は連邦軍に推移していった。統合軍は各地で抵抗を続けながらも、その圧倒的物量による戦況巻き返しのために、各地で戦力の回復に全力を投入した。一方、宇宙では連邦軍の遊撃艦隊が統合軍残存艦隊を殲滅し、完全に制宙権が連邦の手に渡った。

 開戦から7ヶ月目、連邦軍の地球における勢力範囲は、南米、東欧、中央アジア、東南アジアにまで勢力を拡大していた。統合軍は本部基地のある北米と、アフリカ、イギリス、中東のわずかな地域を残して絶望的な防衛戦を展開し、宇宙での戦いは壊滅した宇宙艦隊がわずかな戦力と共に唯一の軍事要塞ルナツーに立てこもっていた。この間、連邦軍は地球への補給線を維持するために無駄な戦力の低下を避け、積極的な攻勢に出ることはなかった、この状況は地球各地で見られ、両軍とも補給状態の悪化は日に日に増していく地域が多かった。

 連邦軍は南米での侵攻作戦中に統合軍の秘密研究施設を接収する事に成功し、地上戦における兵器の技術的な問題を解決することに成功し、このころから戦場に統合軍の最新兵器となるものだった兵器が連邦軍の兵器として投入される。なお、この施設は統合軍の中でもトップシークレットの存在であったため、広く知られて折らず、連邦軍上層部でもその存在が懐疑的なものとされており、存在を信じる者は少なかった。また統合軍側にとってもその秘密性のために、増援やたいした救援作戦も展開されることがなく、ほとんど無傷に近い形で連邦軍は研究施設のほとんどを手に入れることになったのだった。

 

 開戦から13ヶ月目。連邦軍は中東の石油資源を確保するために中央アジア方面軍と欧州軍の一部が中東戦線に対して攻撃を開始、迎え撃つ統合軍は損害が軽微であったアフリカ方面軍が増援として中東方面軍に合流し、徹底抗戦の構えを見せた。

 統合軍と連邦軍の主力はシリアを中心とするメソポタミア地域で激突し、わずかな進撃にもおびただしい流血をともなう泥沼の戦場となる。両軍の戦闘は至る所で激戦となりわずか一週間の戦いで、両軍とも予備戦力まで使い切ることとなり、連邦は戦術的勝利は各地でしたものの、戦力の損失が激しく、作戦目標であった中東地域の制圧は失敗に終わる。統合軍は、投入部隊の半数以上が損失、または壊滅していたので、それ以降、各地での戦線の維持に支障をきたすようになった。

 中東での陸軍の失敗を見て、連邦海軍はその威厳を示すためにハワイ諸島攻略作戦を開始する。ソウルを拠点としていた海軍は日本を空挺部隊と空戦SA部隊の機動攻撃により、わずか1日で主要軍事施設を制圧すると、日本を拠点として太平洋各地を攻略しはじめる。この作戦において水陸両用SAを全面的に投入した連邦海軍は、圧倒的な物量を保持して、それまで海洋で優位に立っていた統合軍太平洋艦隊を撃滅する。作戦発動からわずか一ヶ月で、最重要拠点であり最終目標であったハワイ諸島を、連邦軍は手にいれることに成功した。この間に、水中用SAの有効性を確立した海軍では、各地域での本格的生産と配備に移り、統合海軍は劣性を強いられることになる。とりわけ孤立無援となったイギリスでは、補給の問題からも降伏をやむ得ないものという状況に陥った。

 各地での相次ぐ敗北の中、このころ統合軍本部が存在する北米では急ピッチで戦力の回復が計られていた。空戦型、水中型SAの開発も重要項目としてあげられ、通常戦力の回復と共に押し進められた。一方、北米に対する連邦軍の攻撃は東西海岸線における爆撃と、水中艦隊による威力偵察の驚異を毎日受けており、その消耗と再建に多大な労力を払っていた。なおオセアニア方面にも進出した連邦軍はオーストラリア大陸の三分の二を制圧する事に成功していた。

 

 開戦から18ヶ月。統合軍は各地での戦力の回復により、一大反攻作戦「リバースオブアース」作戦を開始する。イギリス、オーストラリア、北アフリカに結集した統合軍は各戦線で一気に攻勢に出た。イギリスからの統合軍は過去の反攻作戦、「ノルマンディー上陸」になぞって、北フランス海岸に対して強襲上陸を敢行したが、かつての戦い同様、厳しい戦いとなった。しかし精強な連邦軍欧州部隊は激しく抵抗し、統合軍は圧倒的な物量でこれを粉砕していくしかなかった。投入された兵力3000万人のうち、上陸からの2ヶ月で1000万近くが死傷した。統合軍の北アフリカ方面軍では、シリアでの大戦で弱体化していた中央アジア・中東の連邦軍を一蹴し、連邦軍は北京基地と中央ロシア地方、アフガニスタンのわずかな地域を残して敗退していた。オーストラリア方面軍は海戦が主力となったが、まだ水中戦になれていない統合軍SAパイロットたちは物量で勝りながらも敗北しており、太平洋や他の海洋では依然として連邦軍は優勢を保つことができていた。

 リバースオブアース作戦から二ヶ月、連邦軍欧州方面軍は各地での敗退から体制を立て直し、東欧地域とバルカン半島方面を死守していた。中東戦線はわずかな戦いで、そうそうに撤退を決め込んだ連邦軍上層部の采配により、いたずらに戦力の消費をしなくてすみ、敗走してきた欧州方面軍と合流することに成功し、バルカン半島から小アジア方面を依然として確保することに成功した。東欧方面軍も冬将軍の到来によって統合軍の進撃が鈍ったこともあり、各地で好戦を繰り広げ、徹底抗戦の姿勢を崩さなかった。東アジア地域の北京に立てこもっていた連邦軍は、統合軍の特殊部隊による相次ぐ襲撃にあい、崩壊し、日本へとその拠点を移した。連邦の太平洋艦隊も統合軍の物量による攻撃により次第にじり貧となり、ハワイ近海と、日本とのシーレーンを守のに手一杯であった。

 

 開戦から22ヶ月、一年と10ヶ月が過ぎた宇宙暦226年3月。連邦軍は統合軍と南米とオーストラリア、オセアニア地方以外の領地全てを交換条件に、シラグサ条約と呼ばれる譲歩条約を締結。これによりユーラシア大陸にあった連邦軍全部隊は、オセアニアもしくは南米地方へ配属となるか、宇宙艦隊への再編入が決定された。同守備隊は守りを固め、一時期の平和をえる。

 南米方面軍・オセアニア方面軍を残して宇宙への撤退を完了した連邦宇宙軍はかつての精鋭さを再び取り戻し、宇宙軍の戦力は、開戦以前よりも増大化した。一方の統合軍は、手に入れたユーラシア大陸を拠点に、地上軍の再建と、失われた宇宙艦隊の再建に乗り出し、各地の工場でフル生産で兵器の開発を進めた。地上に残った連邦軍は、占領地政策を円滑に推し進め、反統合勢力と各地で結びつき、統合軍に対してゲリラ戦を支援した。

 シラギク条約締結後、宇宙要塞ルナツーで主戦派の青年将校達がクーデターを起こし、この条約に調印した上官を拘束したことにより統合軍から反乱軍扱いとなる。しかし統合政府は宇宙戦力がないことにより、事態収集を連邦政府に一任することとなり、連邦軍艦隊はこれを鎮圧、ルナツー要塞は連邦軍の管轄となる。

 シラグサ条約から7ヶ月、宇宙歴226年10月。各地での統合軍への武装ゲリラの黒幕として、連邦軍諜報部の関与を統合側が発表、再び戦端が開かれる。統合軍は南米方面に対して兵力1450万を投入。電撃的にパナマ地峡を走破し、連邦軍の戦線を次々と破るが、連邦軍南米方面軍の奇計と徹底抗戦により、わずか二日で頓挫する。

 地球軌道上でもルナツー奪回のために地球を発進した統合軍艦隊と、連邦軍遊撃艦隊が交戦し、統合軍艦隊45隻すべてが撃沈されられる。

 11月、オーストラリア・オセアニア方面の連邦軍は、海軍戦力と、かき集めた空挺部隊による東アジアに対する侵攻作戦を開始。北は北京、南はシンガポールなど、東南アジア一帯の主な都市、工業地帯を全て制圧。経済の要であった日本も再度占領されることとなる。

 宇宙暦226年1月、統合軍欧州方面軍・アフリカ方面軍・中東方面軍、アジア方面軍は、戦力を抽出し、オーストラリア侵攻作戦を開始。インドを拠点とした侵攻作戦により、向こう8ヶ月、オセアニア地方をはじめ、南太平洋は戦乱の渦中となる。

 宇宙歴226年6月、統合軍は東アジア一帯に広がった連邦軍戦力の撃滅のために大攻勢を開始、兵力2500万が投入されるが、連邦軍の巧みな戦術と、士気の差から各地で敗退する。

 8月、東アジア一帯を統合軍が制圧したと発表。しかし依然として多くの戦力が山岳地帯などでゲリラ戦を展開し、戦線が落ち着くことはなかった。一方、統合軍本部の存在する北米では、シラギク条約の間に宇宙へと打ち上げた攻撃型多目衛星の活躍により、北米大陸の上だけは統合軍の制宙権であった。しかしそれ以外の地域では、連邦軍による宇宙からの大気圏外攻撃により、統合軍部隊は痛い目に遭っていた。

 9月、オーストラリア大陸が統合軍の手によって解放され、連邦軍の驚異は南米大陸のみとなる。一方の南米戦線では、ジャングル戦など、地球各地で戦い抜いた連邦軍の精鋭部隊によって防御が固められ、投入された1450万の兵力の内、すでに350万近くが死亡・100万近くが負傷するという大惨事が起きていた。事態を重く見た軍部は、統合軍上層部を仕切っていた腐敗政治家達をクーデターにより一層、これにより軍部による戦争指導が行われることとなった。これが世に言う「ブラッディ・セプテンバー事件」である。

 11月、軍部が指導力を握った統合軍は各地で士気が高揚し、南米戦線では今までの動きが嘘のように戦いが繰り広げられた。対する連邦軍も、クーデターにより統合軍指揮系統が混乱しているわずかな間に多くの補給部隊と、増援を降下させることに成功し、南米戦線は熾烈を極めることとなった。

 12月下旬、統合軍宇宙艦隊第一陣76隻が強行大気圏突破。突破中に24隻が撃沈されるが、そのまま侵宙し、地球圏の制宙権を手に入れる。しかし侵宙してまもなく、連邦軍は隕石に巨大なロケットを設置した隕石ミサイル攻撃により、統合軍艦隊に致命的なダメージを追わせることに成功する。

12月下旬、南米戦線各地で連邦軍の巻き返しが始まり、予備兵力まで消耗するが戦線を持ち返すことはできず、逆に撃退されて戦線を突破される箇所も出てしまい、作戦は失敗する。以降、南米戦線の連邦軍の動きは弱まり、潜水艦隊を使ったゲリラ的な戦闘と、小隊規模での小競り合いが続くこととなる。

宇宙暦227年

 1月上旬、統合軍第1連合艦隊がルナツー基地の攻略を開始、SA部隊を初めとした機動襲撃により、連邦軍駐留艦隊を包囲するが、連邦軍は一点突破によりこの包囲網から離脱、直後にルナツー基地を爆破放棄した。統合軍はただの石の塊とかしたルナツーで、補給作業や、修理をすることとなる。

 1月中旬、連邦軍第1艦隊と、大気圏突破を図る統合軍第第1・2機動艦隊が地球軌道上で衝突。統合軍の勝利により。地球圏の制宙権が完全に統合軍の手に落ちる。連邦軍機動要塞バルジが、この事態に対して月宙域より発進。月と地球とを結ぶ中間地点に布陣する。

2月上旬、統合軍南米方面軍が南米方面の制圧を発表、連邦軍の各部隊で武装解除がすすむ。しかし、多くの部隊が潜水艦隊と共に行方をくらます。オーストラリア大陸で、中央砂漠地帯で活動していた連邦軍特務部隊「カラッサ」がアデレードの統合軍海軍本部を襲撃。一時指揮系統の混乱を招く、など地球各地で連邦軍の抵抗は続いた。

 2月11日、連邦軍機動要塞バルジに対して統合軍第1・2連合艦隊が攻撃を開始。連邦軍は遊撃艦隊を含む八個艦隊をもってこれに抵抗。隕石ミサイルなどの兵器の使用で統合軍に多大なる出血を強いるが、11時間後にバルジは轟沈。連邦軍艦隊も壊滅する。

 2月20日、統合軍第3連合艦隊と、第1・2連合艦隊の残存が合流。戦闘艦2800隻。小型艦艇3490隻、SA9800機、動員兵力4500万の大軍となる。対する連邦軍は宇宙要塞カカシギに全兵力を集中。戦闘艦2500隻、小型艦艇2800隻、SA11600機、動員兵力4150万となる。

2月25日、統合軍はカカシギに対して攻撃を開始。史上最大規模の戦いの幕が切って落とされる。

同日、戦いが始まって6時間後、連邦軍特殊部隊により、統合軍旗艦「グラッドストン」が轟沈、最高司令官であるロバート・ダニガン元帥が戦死する。一方、開始より8時間後、カカシギの要塞司令部が陥落。連邦軍部隊は要塞を放棄して後退する。

 2月27日、両軍の特使が商業用衛星都市「シラギク」で会見。停戦条約に調印し、ガリレオ戦争は終結する。

 2月28日。停戦条約に反対する連邦軍地球降下部隊の一部兵力が反乱。潜水艦隊と共に、オーストラリア大陸を攻撃しこれを掌握する。

 4月4日。統合軍の攻撃によりオーストラリアの連邦軍部隊が降伏。完全なる戦争の終結を、両政府代表が発表。

 

両軍戦傷者

統合軍正式発表・・・・・戦死者・行方不明者5億2678万200名(軍属総数8億2000万)

連邦軍正式発表・・・・・戦死者・行方不明者4億9800万8700名(軍属総数6億6000万)

民間人死者・行方不明者・・・・・・12億6234万300名

宇宙暦221年戦争開始前の総人口数 70億8000万4900名

宇宙暦224年戦争終結時の総人口数 47億9287万5700名

ガリレオ戦争における総戦死者・行方不明者   22億8712万9200名