平田篤胤によって開かれた国学の殿堂、気吹舎の現当主である大和田栄のもとに、彦根藩重臣・長野主膳からの「闇の者」に対する対策要請がもたらされた。栄はその手始めとして、鍋島江戸屋敷の騒動の探索を命じた。
わたしはキャラクターを作ってから投入シナリオ決めるタイプですので、特にシナリオに特化してキャラメイクはしていません。このシナリオを選んだのは「道場」を持っていることが使えそうに思ったこと、勢力間の駆け引きが少なそうなことなどからです。前作で3極対立やりましたし。
英国の商館には刀鍛冶の技術で作られた西洋包丁を持ち込んだ商人もいたが、「武士の魂を汚す」との噂も立ち、攘夷派と見られる浪人が見られるようにもなっていた。更にジャーディン・マセソン商会のフーバー・チャールストンも質は認めつつも価格の面で買い取ろうとはしなかった。彼らが現在求めているのは生糸であり、相場の倍を出してもいいという。攘夷派が活動している現在では自分から接触してくる商人は貴重な存在でもある。
そんな中で商館に取材にやってきた瓦版売りもいるが、ペリーの動向などは他国の商館員に詳しくわかるはずもなく、当たり障りのない一般論を答えるだけだった。
江戸では同心の原田光賢が生糸商人殺しの捜査をしていた。聞き込みに訪れた道場では「人を斬った刀を見てみたい」という刀鍛冶も割り込んでくるが、下手人は何度も切り損ねたりしていて剣の心得がないか、よほどの下手かと思われたという。また、横浜で清河八郎率いる浪士隊が異人を襲おうという噂を聞いた者もいた。
お座敷では「南蛮毛唐に思い知らせてやった」という長州の若い侍に、壮年の侍が「派手な行動は慎み、勉学に励む」のが藩のためだと諭していた。宴会の後で酔いつぶれた壮年の侍は広沢、それを支えていた若い侍は品川弥二郎と山田市之丞と名乗っていた。
「三池乱治郎(みいけ・らんじろう)殿とお見受けいたす」
「いかにもそれがしが三池だが」
三池は細い眼を見開いて声の主、瓜長の顔の同心と岡っ引きが三人を見る。
「三池殿に二、三お聞きしたいことがあるのだが少しよろしいか」
三池は領いて同心の話を聞くことにする。
「俺は原田光賢[はらだ・みつよし]というもの。我らは生糸商人殺しの下手人を追っているところである」
「それはそうと三池殿に質問がありますが、よろしいかな?」
「何か?」
唐突に話を振られた三池は慌てて答える。
「先程、同心に自分の道場は事情を問わずにうんぬんと言われていたようだが、それは真か?」
「確かにそうだが、それが何かあるのでござるか?」
「それがし、今晩泊まる宿がまだ決まっておらぬので、もしよければ三池殿の道場に一段落つくまで泊めてもらおうかと思ったまでで……」
登場PC7名、分量にして3ページと5分の1程度というリアです。実は自分のPCも想定したシナリオではなかったのですが。こちらの登場シーンはそこそこの分量でしたけど、行動では話を聞かれていただけかな。
2002,02,01物騒な事件が続き、それに興味を持つ者達も増えている。商人達もこの話題に敏感になっているが、被害にあった店の一つ大園屋は跡継ぎもいないことから店を閉めていて、残った手代からは横浜に気になる女性がいたらしいとの話を聞く。また、英国の「まくふあれん」なる人物と何度か取引の話をしていたそうで、攘夷派の反抗とも考えられる。
生糸商人殺しと並んで土蔵破りも増えているのだが、奉行所では土蔵破りに人員をあまり回さず、どちらも思想的背景からの犯行であると考えているようだ。だが、調査をしていた一人は大園屋の事件は手口などが違うと考える者もいた。
自ら望んで見回りを行っている者もいる。同心の原田光賢などはいい顔をしていないが、その下っ引きの一人は六車団蔵という元・岡っ引きが「土蔵破りは昔の事件に手口が似ている」といっているという話を明かした。原田は「年寄りの話」と相手にしていないようだ。
そしてまた殺しが見つかった。現場には複数の人間から刀で斬られたと見られるものと頭を銃で撃たれた死体があった。居合わせた医者がそれを検分しているところに現れた浪人風の男は「これは親の敵」であるとして強引に首を切り落とし、持ち去った。その男は浪士隊と思われる者達に守られるように去っていき、つけていたものは日本橋付近で姿を見失った。
その死体は浪士隊を結成した清河八郎である可能性が高いという。資金集めのため江戸に出ていたらしいが、その懐にあった書状では横浜居留地で攘夷を行おうとしていたとも見えるという。そして首も持ち去った男も見つかっていない。
三池乱治郎(みいけ・らんじろう)は異国の商人と取引をしているという商家を見回っていた。
当初は道場の備品を仕入れるという名目も考えていたのだが、異国の商人と取引をしようとしているところは商店ではなく大きな商家が多い。それらの商家は個人の取引は取り扱っていないところが多いため、下手な駆け引きは抜きにして、道場主という身分を証して善意の見回りを行っていたのだ。
「原田殿にはそれがしが見回りをすると事前に連絡を入れておいたはずだが」
「それは聞き申した。が、三池殿の手をわずらわせるわけにはいきませぬ。我々にも立場というものがあります」
口調こそ丁寧を装っているが、「俺達の縄張りを邪魔するな」という意志がひしひしと伝わってくる。
「なるほど、よく話してくれた。で、その六車の旦那ってのは何処にいるんだ?」
「下町の長屋にひっそりと住んでいるはずでさぁ」
「何やってる、早く来い!」
原田の怒鳴り声が遠くから聞こえてくる。下っぴきを呼んでいるのだ。よほど三池と話しているのが気にくわないらしい。
「通してやれ。なんにせよ医者は必要だ」
三池は久世が進むのを助けてやる。久世はそんな三池の行動に気づいたのか気づいていないのか死体の近くに行くことが出来た。
三池は慌てて物陰に隠れながら浪人風の男たちを尾行する。しかし、日本橋の商家が立ち並ぶ通り入り組んだ通りで見失ってしまった。
参加は6PCで、分量は前回とあまり変わらず。攘夷側の話題はほとんどなくなっています。人数に対する分量はまあまあと思いますが、絶対的な情報量が減っているかも。
2002,03,08殺された生糸商人の大園屋には気になる女性がいたらしいとの情報があり、それを確かめに横浜に出向いた者がいる。大園屋と取引のあったマクファーレンを見つけた者は、その脇に洋装の日本人女性の姿を確認した。
江戸での土蔵破りは攘夷派や浪士隊との関係が噂されているが、調べていくほどにその関連性が否定されていく。土蔵破りは明らかに金品が目的であると思われるが、殺害事件では殺害そのものが目的と見られ、浪士隊も噂はいろいろ聞くものの、実際に事件を起こしたという話はほとんどない。
土蔵破りについては、隠居している元岡っ引きの六車団蔵が過去の事件との類似性を指摘していた。今の奉行所から軽んじられていて不満のたまっている六車の話はくどかったが、事件はもう死んだはずの「駿州鼬の鉄」の弟子の仕業ではないかと思われ、鉄達には事件後の岡っ引きの捜査をのぞきに来る癖があったという。
町合所へ売り込みに来ていた医師は、そこに異人女性が怪我をした浪人風の男を運び込むのに遭遇した。その者の話では、元来は民衆のために警告活動を行ったり、攘夷を名乗って害をなす浪人を一掃するためのものだった「浪士隊」が自らも他と変わらぬ集団へと変わりつつあるので除隊を申し出たところ、曲解したものとの諍いとなったらしい。「浪士隊」はまだ派手な活動をするほどではなく、公使館焼き討ちなどは水戸か長州の過激派ではないか、というのがその男の見解だった。
その後、ぺるりが「自国民の安全のため」と派兵を宣言したことから各国の公使館では外出自粛令がでて、異人が外を歩くのを見る機会はめっきり減った。また、マクファーレンと共にいた日本人女性が川崎宿の料理屋の娘、お甲であるのも調べがついていた。
そして江戸では茶問屋の木原屋の土蔵が破られた。その調査中に周囲を警戒していた者は怪しい行動の男を見かけるが、気付かれたのか人混みに紛れて姿を消してしまった。
「だから儂は最初から言っておった。昔の手口と同じだとな。全く、最近の若いもんは」
「全くでござるな。それがしも最近の奉行所のやり方は甘いと思っておる。だからこそ奉行所には頼らず、町人としてこの事件を解決したいのでござる」
「そうか、若いにしては話がわかるな」
三池は六車とこうして半刻ほど同じ話題を話していた。そろそろ肝心の昔の事件とやらについて聞きたいのだが、牢をとると話がくどくなると世間の人がよく言うように六車の話も愚痴や「昔はよかった」と繰り返すだけでなかなか話が進まなかった。
二十年ほど前に連続して土蔵破りが起こったことがあった。その土蔵破りをやったのは駿州鼬の鉄[すんしゅうねずみのてつ]とかいう盗賊らしい。
だが、その鉄も十五年前に捕まり、八丈島に遠島流罪に処せられたという。捕らえたときには既に盛りを過ぎており、遠島の生活に馴染めずに死んでいるかもしれないとのことだった。
「死んでいるなら下手人ではあるまい」
「話は最後まで聞け。鉄には若い弟子がいたんじゃ。鉄と一緒に流刑にされたんじゃが島抜けをしたとも考えられる」
「ならいいことを教えてやろう。鉄は土蔵破りをした後、奉行所の同心たちが調べるのをわざわざ人混みにまぎれて見に来るという癖があった」
「つまり、次の土蔵破りがあったときは人混みに注意を払えと」
他の野次馬と同じように遠巻きに立って眺めているようにも見えるが、注意してみると風草たち同心の一挙一動を監視しているようにも見える。
「やあ三池殿、調子はどうだ?」
風草は偶然に野次馬の中に三池を見かけたふりをして商人風の男に近づいていく。商人風の男は風草が近づくと同時に離れていく。
「調子? ……なるほど」
三池も察したようで、さりげなく商人風の男に接近していく。だが、慎重を期しすぎたのか風草や三池が商人風の男に近づくよりも先に人混みの中に埋もれて消えてしまった。
「逃がしたか……だが顔は覚えた」
とりあえず…「鼬」は「ねずみ」じゃ変換出来ません。「いたち」なら変換するけど。まあ幕末にはこう書いていた可能性があるかは未調査ですが。
2002,04,06江川太郎左衛門英敏が代表者である幕府の調練所から旧式のドンドル銃が盗まれる事件があった。その容疑者と思われる浪士・西山達吉を捜す者達は手がかりを掴むことはできなかったが、プライン特別補佐官襲撃事件で逮捕された浪士たちにはその銃を使った形跡はなく、別の者との繋がりも考えられた。
異国の商人「まくふあれん」の元にいる日本人女性・お甲の義父という男である料理屋の主人から、大園屋の殺害事件に繋がる情報が得られないかと訪ねた者もいる。だが、マクファーレンは大園屋の紹介で4年ほど前からつき合いがあり、1年ほど前にお甲を商館で働かせることになったという程度の話しか聞けなかった。
土蔵破り事件では、事件の現場周辺をうろついていたという男の他に、元岡っ引きの六車団十郎からの情報で取り調べを見ていた一人の人相書も作られた。その顔は呉服屋の菱屋宋兵衛に似ていたが、身元のはっきりした商人であって疑わしいだけで捕らえることはできない。六車の記憶も昔のこととて曖昧で、その人相書も覚えがあるようでないようなものだった。ただ、もう一枚の人相書は昔の下手人「鉄」の弟子で、助吉だか留吉だか忠吉だかというものらしい。
外国人居留地はメリケンとの開戦で攘夷の活動も活発となって、互いに警戒を強めている。商船も出入りを制限されてしまっているが、異国の商人には銃を売ろうというものもいるし、銃を買いたいと望む日本人も接触する。その銃は旧式で、異人ということで間違えて接触したが本来の取引相手はマクファーレンであったらしい。
「なるほど、よく描けている」
風草は同僚に描いてもらった人相描きを、顔見知りになっていた道場主の三池乱治郎(みいけ・らんじろう)の処に持ってきていた。
「この男の身元を割り出せば良いのであるな」
「この男は身元のはっきりした商人だ。奉公から十余年。大成功を納めたと言うには言い過ぎにしても、立派な呉服屋だ。さっき、直接話を聞いてみたんだが『手前どもも襲われないか心配で』だと」
確かに理屈は通っている。流石に怪しいというだけで、身元のはっきりした商人をしょっぴくわけにはいかない。
「島抜けならば体の何処かに入れ墨があると思うのだが、その宗兵衛とやらは銭湯には行きそうか?」
「その考えは悪くないかもしれないが、どうやら自宅に立派な風呂を持っているようだ。わざわざ銭湯には行かないだろうな」
「八方手詰まりでござるな」
「この顔は見覚えはある……かもしれん」
かなり時間をかけて六車は捻るように言う。
「どっちなのだ? 見覚えあるのかないのかはっきりしてほしいでござる」
「人の顔なんて年を取れば変わるもんだ。しかも人相描きだけじや保証は出来んわい」
「それは尤もな話。それではこちらの方は?」
風草は念のために持ってきていたもう一枚−−奉行所の同心達が見つけた容疑者が描かれた人相描きも六車に見せる。
「こちらは見覚えある。鉄と一緒に捕らえた弟子の一人だ。見田の助吉だか留吉だかいう名前じゃ」
「そうか。では、この最初の人相描きの男は今回の事件とは無関係ということか」
「待て。土蔵破りは一人では出来ん。必ず仲間がいるはずじゃ。その最初の人相描きの男は忠吉の仲間の一人ではないのか?」
「助吉なのか留吉なのか忠吉なのかはっきりして欲しいでござるよ」
PC8名、量も少し多いですが、今までは別の番号だった方が数名いるし、そちらの方のあらすじで半ページほど使ってるし。話もあまり進んでいない気がするけど、方針なのかどうなのか。
あと「入れ墨」と「彫物」を間違えてないかな? 罪人には腕に入れ墨をした上で島流しにしたはずで、かなり目立つはずだと思うけど。それと、「銭」という通貨単位が無い時代に「銭湯」はないだろ(^_^;)
2002,05,10幕府調練所から盗まれた銃の手がかりを追う者は、横浜居留地で鉄砲の試射が行われるという情報を聞き、それに参加することにした。
横浜居留地ではマクファーレンが取引をしようとする相手が過激な攘夷派では無いかと疑い、その取引に立ち会おうという外国人商人もいた。また、大園屋殺害事件に絡んで、大園屋の紹介でマクファーレンに雇われたお甲に話を聞いた者もいるが、互いに商売相手でその話で盛り上がることもあったということぐらいしか聞けなかった。
土蔵破り事件の下手人が攘夷派に転向している可能性を疑った者は、まだ話のわかる攘夷派の平真隊に話を聞きにいったが、名前の似ている達吉は下手人とは別人であった。
マクファーレンの取引現場では、同行した商人は取引相手がやはり先日勘違いして声をかけてきた相手だと確認していた。そして、その男が達吉であるのは幕府側から立ち会いに出された者が確認し、達吉は取り押さえられ、同行していた編み笠の男が逃亡しようとして射殺、もう一人の町人風の男は逃走に成功した。そしてその日、過激な攘夷派の30名ほどが捕らえられ、江戸の攘夷派は一通りケリが付いたようだ。
その翌日、菱屋は突然店を畳んで姿を消した。マクファーレンもお甲と本国に帰り、新たな商品を仕入れているのだろう。達吉の証言からは菱屋が攘夷派にとうていまかなえない金額の援助をしていたとわかったが、行方はあいかわらずしれない。そして幕府調練所の責任者江口英敏は日米会戦後に体調を崩し、引退した。
三池乱治郎(みいけ・らんじろう)は諸処の事件の解決のために、なんとなく気の合いそうな奉行所の風草一馬(かぜくさ・かずま)に会いに来ていた。
「聞きたいのだが、それがしは下手人が攘夷派になってもおかしくないと思う。そこで攘夷派に話を聞いてみようと思うのだが、攘夷派は何処にいるでござろう?」
三池は平真隊の隊員に攻撃されていた。
「攘夷派で土蔵破りの下手人の達吉だか留吉だか定吉はいないか?」と正直に聞いたために何か勘違いされたらしい。
「まあいい。刀の腕のたつのは歓迎だ。それよりも、達吉とかいう攘夷派を探しているのか? 達吉なら日本橋界隈で見かけたという噂がある。何でも鉄砲を盗んで逃げたとかなんとか。土蔵破りの下手人かどうかは知らないが」
それを聞いた三池は風草からもらった人相書きを奥から来た男に見せる。
「これが下手人の顔だ」
「これは達吉じゃないぞ。何か間違えたんだろう」
「そうか、失礼した」
達吉が捕縛された翌日、人相書きを持って町を歩いていた三池乱治郎は、慌てた顔をして走っている風草を見つけた。
「何をそんなに慌てておられる」
「菱屋が店を畳んだ」
PC6名、前回合流したはずなのにまた4分の1の人数が減っていますね。しかも、土蔵破り関係者2名(三池含む)が遅刻処理。そりゃ失敗するよな。でも遅刻してもこれだけの描写量なのは人数少ないからですね。
2002,06,08