「暗黒」が大きくなり、竜となる。そしてその牙が彼を捕えた時、彼は目を覚ました。3年前に地上に落ちた、元・レグルタの古代村アクエスに住む、幻獣の召喚を可能としたことでその筋では有名な魔術師リック・ハイアは、ここで3歳になる息子のエリックの無邪気さに似合わぬ強い魔力に手を焼く日々を送っている。そして最近は村の回りに冒険者が見かけられるようになり、古代技術の悪用を恐れる彼らは警戒を強めていたが、協力するものは味方、歯向かうなら敵ということで監視だけが続けられている。
イドニシアの首都ミレトスキアは貿易が盛んな都市であり、そこの酒場には大勢の人間が集まっていた。そしてそこにいた多くの者達が3匹の赤いドラゴンが北に向かって飛んでいくのを目撃する。東の方でも3匹の赤竜が目撃されたという話もあり、ドラゴン・ルーンがあるならば竜たちが飛び去った方角かもしれない。
それから1週間後のアエクスには、酒場で芸を披露していた道化師と導師の二人が訪れた。道化師はラプラス・リバース、導師はラグランジュといい、共にリックの知り合いだという。彼らはリックが狙われているという情報をもってきていた。
フェスティリアの首都ラクレイアは港湾都市であり、さまざまなものが流れ込んでくる。最近ここで見られるようになった「無の教団」は、無の境地に達することで世界を平和に導くという教義らしいが、彼らはドラゴン・ルーンを崇めているという話もあり、実際彼らの杖には「回復」のルーンの写しがあった。また、ここにはリックの義兄弟、アーク・ハイアも帰って来ていた。
アエクスに近い街道筋の酒場には、いつになく大勢の冒険者が集まっていた。なぜかアエクスに秘宝があるという情報が広まっているようだ。だが、そこは赤竜に襲われることになる。その後、赤竜たちはアエクスに向かって飛び去った。
赤竜たちはアエクスを攻撃するつもりのようで、結界を襲うもの、森を焼き払うもの、冒険者を襲うものとわかれて行動する。そんな中、一人のハーフエルフの少女を襲う黒ローブの集団があった。竜を気にしていない彼らは何らかの繋がりがあるのが予想され、気絶した少女を運び出すのも大変そうだ。
アエクス側ではリックの弟子、シャルン・エクスポーネの幻獣、青フッサのサインが湖の水を飲み干した後、結界を解いて反撃にでようとする。だが、その瞬間にエリックが「かいじゅうたいじ」と飛び出してしまった。
「おーい、こっちだ、こっち!」
騒がしい酒場の中で、角を生やした男、クエルノルンのカガリ・グリーンは、大皿に盛られた料理を運ぶ店の主人を手招きで呼んだ。
「おっ、いただくぜ!」
主人が皿をテーブルに置く前に、ミチナカ・コウシュウが皿の上の科理に手を伸ばした。
「おい、それはオレのだぞ!」
「ボクもいただきまーす!」
フェアリーのフレイア・ビアトリスも、羽ばたきながら大皿に突進すると、フルーツを掴み取り、天井に向かって逃げていった。
「このフルーツ、おいしー!」
フレイアは空中に浮かびながらフルーツにかじりつくと、至福の笑みを浮かべた。
「気にするな。所詮、どこのどいつが頼んだか分からない物だろ?」
「……まあな」
カガリは納得すると、ミチナカと一緒に、一心不乱に料理を腹の中に詰め込んでいった。
やはり初回は顔見せ要素が強いですね。非コンバートキャラだということもあるのですが。
2001,06,25レグルタの隠れ村アエクスに3匹の赤竜が襲撃してきた。竜たちは傷を負ってもすぐに塞がる強さで一同を苦戦させる。
また、ハーフエルフの少女を襲う黒ローブの男たちはその数が問題だった。乱戦からかろうじて抜け出した者達は気絶した少女を近くの集落に運んで行った。
リック・ハイアの息子のエリックは幻獣のマルと「どらごんたいじ」に飛び出して行ったが、古代魔法を禁じられていて見物するだけに終った。
アエクス村ではリックがエリックを迎えるために結界を説いた途端に意識を失っていた。そしておやつの為に帰ったエリックは、ドラゴンが互いに治癒魔法を掛け合っていたのに気が付いていたようだ。
そのとき現れた巨大な黒龍は一頭の赤竜を簡単に屠る。その背に立っていた黒づくめの騎士と目をあわせた者たちは強い畏怖に支配されてしまった。その頃他の二匹も姿が消えていく。どうやら赤竜たちは魔法生物であったらしい。
黒ローブの男を追っていたものは、その中にかつてリックと争ったミニットの姿を見つける。うわごとのように「すべてのルーンの復活を」と呟くミニットは骨まで溶けて無くなり、右手のあった部分には剣でつけたようなヒビの入った不思議な文様のあるガラスのようなものが残っていた。
ハーフエルフの少女は目を覚まし、フーリエ・ファストランスと名乗った。彼女はリックに会いに来たらしい。ラグランジュは、リックが彼女の父親を殺した人物か見きわめるためだ、と察していた。
その頃、リックは暴走してラプラスを傷付け、どこかへ去っていた。フーリエの目的はもう一つ、母親がリックに渡すよう遺言したスクロールを届けることがあった。フーリエの両親はリックと3人でソル・アトスの秘宝を探す旅に出たことがあるという。村のものが「リックに父親が殺され、母親が病気になった」と言っていたわけはわからない。
フーリエが持ってきたスクロールは難関として知られるアルカウェスの「クラムドの地下迷宮」のものだった。クラムドの直筆らしいその図面には迷宮攻略のヒントと思われる
・『地下』迷宮に出口無し
・不用な鏡は一枚、必要な鏡は一枚
・鏡が示す『天井に入り口無し』
という言葉が書かれていた。
リックは「無の教団」の一党になりかわっていた。教団自体が人形に過ぎないというリックは「全てを無に帰すか、阻止するかの戦争が始まっている」といい、自分に従うならこの世界の未来に訪れる真の平穏を見せるという。
アルカウェスに向かった一行は、その入り口でドラゴンゾンビが迫って来るのを見る。ラプラスとラグランジュはいちはやく迷宮に飛び込んでそれから逃れた。そして、置いてきたはずのエリックも迷宮入り口に向かって突進していったのだった。
ミチナカ・コウシュウは黒いローブをまとった男たちと間合いを取りながら、森の中を走り回っていた。
「これはど数が多くては……」
風術魔法の疾風で動きを早めていたが、取り囲む男たちの数の前に疲れが見え始めていた。ミチナカが木の陰で一息つこうとしたその時、頭上からミチナカの前にローブの男が飛び降りてきた。
「何!?」
頭上からの一撃は何とか避けたミチナカであったが、不意を突かれたために、それ以上足が動かなかった。その時、ミチナカの背後から男の声が聞こえてきた。
「花鳥無斬!」
声と同時に、目の前にいた男の肩口から鮮血が飛び散ると、ミチナカの前で崩れるように倒れた。
第2回、戦闘だけしててちょっと不満。戦闘描写が決して好きではないからですが、こういうキャラクターじゃ仕方ないかな。
2001,07,23リック・ハイアは彼の考えに協力しようという者たちに高圧的な物言いで対応していた。ほとんど追い払うように送り出した後、リックは瞑想に入りドラゴンゾンビを操る物を見極めようとしていた。
魔方陣から入ったクラムドの迷宮は構成する物全てが鏡で出来ていた。目印を置いてもそれが合わせ鏡に映って混乱するのは間違いない。
先行して迷宮に入ったラプラスとラグランジュは「秘密を暴く鏡」に映る互いの姿に驚いていた。通りかかったリックの息子エリックもそれを見たが「黙っていないと花瓶を割ったことをバラす」と口止めされた。
迷宮の外ではドラゴンゾンビに苦戦する者たちがいた。それに加わるでもなく瞑想するリックの脳裏には、畳敷きの部屋で一本のロウソクを見つめて「回復の竜とは比べ物にならぬ冒涜の竜の力を思い知るがよい」という男の姿が映っていた。
迷宮では人々が自らの声により触れられたくない部分を聞かされ、パニックに陥っていた。それは迷宮の鏡の魔力のようだ。ハーフエルフの少女フーリエも「ハーフエルフですらない」という声に狂乱してしまう。
ドラゴンゾンビとの戦いは2時間を超えていた。そして畳敷きの部屋の男が魔力の限界を感じた頃、男は誰もいない部屋に人の気配を感じた。そして「冒涜のルーン」を必ずいただくとの宣言が聞こえ、ロウソクの炎が消える。それに対し、男は「返り討ちにしてやる」と言った。
そしてドラゴンゾンビは幻のように消え、ゾンビたちは崩れ去った。リックは「鏡の迷宮は誰でも抜けることができるが、その裏に潜む真の迷宮を抜けたものはない」と呟く。
迷宮ではたまたま破った天井の鏡の裏に通路を見つけ、そこを進んでいくことでやがて床に魔方陣が描かれた空間に出る。そしてやはり偶然見つけた「文字の意味を反対にする鏡」で魔方陣の「天井に入口なし」の文字を映すことで「床に出口あり」の魔方陣に変換。気がついた時、冒険者たちは荒涼とした山の頂上に立っていた。
そこで一同は迷宮の制作者クラムドの幻影と会話をする。クラムドの言うには、人の心こそが迷宮であり、生きる限り抜け出せない。この迷宮はそれを模しただけだということだった。そして餞別だと出現したのは「天鏡」であった。短いが激しい争奪戦の後にそれを手にしたラグランジュは、リックに「ゾンビの頭領に会いに行け」と言われる。
ラグランジュはラプラスをつかまえ、再び先行して「天鏡」に導かれつつ「黄金郷」への入り口をくぐっていった。その先はワキウ国のアンドという地域で、ラプラス達は既にお尋ね物となっていた。圧政で領民を苦しめる「六魔王」はドラゴンゾンビを操り、更に次の満月にはもう一匹を召喚して完全な力を手に入れるといっているらしい。また、睨むことで相手の抵抗を奪うこともできるようだ。
「……あれ?」
人口であるほこらに入ったライア・アルヴァンは目の前の地面に大きな穴が掘られているのを見つけた。
「これが迷宮の入口ですか?」
「どう見ても違うと思うが……」
隣にいたミチナカ・コウシュウがライアに突っ込みを入れた。
「あそこに見える魔方陣が入口だろ」
穴の先の地面に円形の魔方陣が描かれていた。その魔方陣の中に入っていった冒険者たちは、二人の目の前で次々に消えていった。
「じゃあ、私たちも早く行きましょう」
ライアが穴を避けて歩き出そうとしたその時、ミチナカが頭の上の物音に気づいた。
「危ない!」
ミチナカは刀を抜くと、ライアを目がけて降ってきた物を弾き飛ばした。鈍い金属音がほこらに響くと、地面に一つの金たらいが転がった。
「大丈夫か、?」
「ええ、大丈夫です。ありがとうございます」
ライアの微笑む顔を見て、ミチナカは思わず視線を逸らした。
「それにしても、古代の罠もたらいを使うんですね」
「いや、それは違うと思うが……」
どうもこのブランチは小さなイベントを積み重ねるつもりのようですね。その方法論が正しくないというつもりはないですが、強制移動かけて後戻りできないという「オシ」の強すぎるシナリオには少々「上手くない」という感想を持ってしまいますね。
2001,08,18アンドの城を治める「六魔王」は「威圧のドラゴンルーン」を使い、襲撃してきた冒険者たちを身動き取れない状態にした。
「天鏡」を持つラグランジュは、この天鏡はまだ不完全で、真にこれを扱えるものはここにはいないと言って、冒険者たちの協力要請を断っていた。そして「ラプラスのパントマイムの開演時間」と言って町へと出発していく。
城下で城に関する情報を集めていた冒険者たちは、よくわからない言葉に戸惑いながらも、前にドラゴンゾンビが現れた時には城の屋根が壊れたという話を聞く。そして「対になる竜」ということから、城の屋根にあるシャチホコに関係するのではと思い至った。
冒険者たちを抑えたままの六魔王は「冒涜のルーン」でドラゴンゾンビを呼び出し、新手の冒険者たちを襲わせる。「まず半分の力」という六魔王は「まもなく私の目の前に二つの力が揃う」と呟いていた。また、エリックは戦いを逃れるため空に舞っている。
ドラゴンゾンビに苦戦する者たちは、新たに「黒の竜騎士」が現れたのに気が付く。
フーリエは「この格好じゃないと失礼」と、黒衣ではなく昔の青いローブで現れたリックから両親との因縁を聞く。
リックの語るところによると、フーリエの両親はレグルタに対する迫害で12才の時に家族を失い放浪していたリックを助け、共に冒険していた。だがソル・アトスの秘宝を巡って、世界の破滅を求める集団となってしまった「無の教団」と対立することになり、毒により危機に陥った。その時自らを犠牲にしてリックと自分の妻を逃がしたのがフーリエの父親、セレスティア人のパーシバル・シュバルツだった。フーリエの持つ矢筒とアルカェウスの地図はその遺品である。
パーシバルを弔った後に、その妻でエルフのグリーン・ファストトランスは彼の忘れ形見がその身に宿っているのに気がついた。だが、故郷に戻ったグリーンが出産したのは、褐色の肌を持っていた父親よりも更に黒い肌の娘だった。それが教団から受けた毒の影響だというリックの予測は受け入れられず、よそ者であるリックに「呪術師が悪魔の子を産ませた」という非難が向けられた。グリーンはリックを村から逃がし、リックは秘宝を見つけて無の教団を叩きつぶすことを誓ったという。
語り終えたリックは、無の教団を乗っとり破滅を望む集団に変えた大僧正ゼロがイシス=アーラヤにいるという。そしてドラゴン・ルーンの解放を願い、秘宝の集結を恐れていると。自分の言いたいことを伝え終えたリックは「俺の力を見抜けなかったものに、話す言葉はもうない」と去っていった。
城の上空ではドラゴンゾンビと黒龍が戦闘をはじめていた。また、まだ仲間がいるにもかかわらず城に対して火攻めをかけたものもいる。
そして屋根の上ではシャチホコの片方から見つけたドラゴン・ルーンをエリックが発動させ、「じょーかのどらごん」である銀のドラゴンが出現していた。その竜の放つ光のブレスはドラゴンゾンビと、地上のゾンビたちを消し去った。
浄化のドラゴン・ルーンが発動したのに気がついた六魔王は、そちらに気を取られて冒険者たちへの拘束を弱めてしまう。その機を逃さず冒険者たちは六魔王を攻撃、自由を取り戻した。威圧のドラゴンルーンも砕けたが、それでも六魔王は抵抗を続ける。しかし、窓から見つめる竜騎士に「威圧」されてしまった。反対側の窓から現れたリックと挟まれた六魔王に、声だけで「もう終わりじゃ、セカンド」と告げた存在は「ゼロ様」と呼ばれた。そのやりとりの隙に攻撃を仕掛けたものが「冒涜のルーン」をリックに渡し、リックは六魔王に止めを刺した後、ラグランジュと共に黒竜に乗って去っていく。
イシス=アーラヤに向かうためスウ帝国に渡った一行は、シヨウフク山の麓で忍者装束の集団から襲撃を受ける。それの撒いた白い粉を浴びたもののうち、フーリエだけが激しい症状を起こす。「洗脳されたミニットとセカンドの仇を討つため」教団を裏切ったというディグリは、その粉がフーリエの母親達に浴びせられた毒と同じもので、体内にそれを残していたフーリエのみが苦しんでいるのだという。その毒を解くために必要な「解毒のルーン」はディグリから渡されたが、それはまだ解放されておらず、シヨウフク山の周囲にある5つの湖に浸すことが必要だという。ただし、ディグリが裏切ったことを含めた全てはルーンを解放させようという罠だということだ。また、時間に余裕もない。
そしてリックは西からくる脅威を感じていた。
城内の喧騒とは正反対に、城下町は非常に落ち着いた雰囲気が流れていた。
「……で、何て言ってるの?」
「……方言がきつくて、分からん」
ミチナカ・コウシュウ、フレア・ボルカノン、そして、アークの三人は城に関する情報を集めようと城下町にやって来ていた。真夜中ということもあり、町にほとんど人影はなかった。しかし、運良く一人の男を道端で捕まえ、城のことを根掘り葉掘り聞き出そうとした。
「きみは地元の人間でしょ!?」
「ここで生まれたわけじゃない!」
「……とりあえず落ち着つけ、二人とも」
熱くなるフレアとミチナカをアークが抑えた。
「分からないとはいえ、少しは会話していたじゃないか。何か分からないのか?」
「あ、ああワシの理解が間違っていなければ、ドラゴンゾンビが現れたのも、こんな満月の日だったらしい。ただ、その時に何があったのか知らないが、城が吹き飛んだらしい」
「吹き飛んだ!?」
「吹き飛んだといっても、屋根がなくなっていたという程度だが……」
言いたいことは前回と変わらずです。マスターへのメッセージでその辺を伝えたところ、「PC達の状況が引きを許してくれるほど余裕がない」と。その状況を設定したのもマスターでしょ。
2001,09,22「覇王」アンティスが姿を消したカルディネアでは、彼と最後に会ったという者が「全ての人々が自らの手で未来を模索していけばいい」と言い、アンティスの飛竜ラス・ドレイクを継ぐことを宣言した。それに対して非難の声もあがるが、その情熱に賛同する者もいる。
カルディネアの王位については、アンティスの実子アストラインが継ぐべきだという声も根強い。国内外に反対勢力を持つ現状に対応するには求心力をうしなわずにまとめ上げることが必要というのがその理由の一つとなる。一方でアンティスの「覇王宣言」に基づいた王不在の政治を実現しようという勢力もまた大きい。
各地の戦線ではアンティス不在に混乱しつつも、まだまだ士気は高い。やがてアンティスが帰還するのを信じている者も多く、その時のためにも恥ずかしいことはしたくないという気持ちもあるようだ。
カルディネアに対抗する勢力もアンティス不在を好機とは見ているが、政治的な駆け引きもあって必ずしも順調とはいえない。
アストラインの下には忠誠を誓う者達が集まっていた。「全ての王を滅ぼす」というアンティスの意思には反するかもしれないが、忠誠を誓う対象を必要とする者もまた存在するということだろう。そしてアストラインは、自分はアンティスの代わりではないといい、自らの考えでカルディネアを脅かすエクスヴァリオを倒すと宣言した。
エクスヴァリオ連邦同盟軍の指揮官であるマークレットは《速度》のドラゴンルーンを使い奮戦していた。だが、そのルーンを狙う者も多く、乱戦の中で遂に命を落とす。
そしてアンティスの消えた場所に出現していた「石柱」から《霞霧》のルーンが現れた。竜術師ヴェルサス・アガペスはそれに《強化》《速度》《静寂》《魔畜》《愛憎》を合わせた6つを自分に取り込み、巨大な「魔竜」となった。
カルディネアの海軍はエクスヴァリオに敗退したという。舞台は陸上となり、雌雄を決する時が近付いているようだ。「全てを差し出せ」という魔竜もそれを見据えている。
「あれが……魔竜……だと?なんて邪悪な気だ」
東方剣士ミチナカ・コウシュウは刀を握りしめたままその場に立っていた。強い相手を求めてはるばるやって来たミチナカであったが、震えがとまらなかった。
「武者震いというやつか……な」
それは噂でも虚構でもなく、現実だった。
魔竜は現実に復活を遂げたのだ。
JBブランチに馴染めず、ネットワールドの記事だけを見て移動をかけた第5回。登場できただけでもいいとしましょうか。
要約作業をしてなんとか大まかな状況をつかめた感じです。アンティスの言葉を文字通りに捉えるならアストラインを王に戴くことはできないという大いなる矛盾があるわけですね。
2001,10,24カルディネアでは次のエクスヴァリオとの戦いを決戦と位置付け、国内が一丸となって当たらなければならないと感じていた。
前線では負傷したオルガンザ将軍も志気を保つために戦場にかり出される方針が立てられていた。エクスヴァリオは将軍との戦闘で命を失った司令官マークレットの弔い合戦との意識も強く、意気が上がっている。
オルガンザ将軍は竜を好まない。アンティスから飛竜を受け継いだという者は「私を越えてゆけ」という最後に聞いた言葉を伝えた。それに従い飛竜を使おうという者に、将軍は「この世界にいなかったものを使った結果、魔竜が現れたのではないか」との疑問を口にする。だが彼に干渉しようとは思っていないようだ。
カルディネア軍はアンティスが姿を隠してもなお結束を保っている。将軍たちは、人々が自分の意志で戦うこの状況こそがアンティスの求めていたものではないかと感じていた。
カルディネアの宰相はアンティスの実子アストラインを擁立して「国家」としてのカルディネアを存続させることがアンティスの意志を継ぐことだと考えていた。アストラインも「父を越える」とこれに同調し、カルディネアの反宰相派は粛正されていく。
エリジアではカルディネア軍が撤退したことでイドシニア軍が駐屯する。自立を促そうというカルディネア軍の思惑とこの期に援軍を要請して解放を願ったエリジア軍の思惑が重なった結果である。また、レディアス地方では独立してカルディネア軍の妨害を続ける一派も存在していた。
ビハール高原での戦闘では互いに陽動、奇襲作戦を使い膠着状態に陥っていた。オルガンザも戦闘で再度負傷している。後退していくカルディネア軍を追っていたエクスヴァリオ軍はやがて進軍を停止し、カルディネア軍も動かない。上層部で交渉が行われているようだ。
魔竜を制御して戦力としようと考えたものもいるが、それは自軍を窮地に陥らせることになる。自らを使って魔竜を召還したヴェルサスの意志に呼びかけようとするものもいるがそれに応える言葉はない。そして魔竜は幾人かを取り込み、彼らは現実と非現実の入れ替わった世界に戸惑う。
エクスヴァリオ連邦同盟はグリュンワルネ女王エレネミアの名による、グリュンワルネ領土の返還を条件とした3年間の停戦を申し入れていた。そのグリュンワルネ首都だったシュトロハイゼンは魔竜によって大きな被害を受けている。
カルディネア軍とエクスヴァリオ軍の睨み合いは続いている中、マークレットの最期に感銘を受けたと言う東方剣士ミチナカ・コウシュウは、エクスヴァリオ軍の中に身を置いていた。
「マークレット司令官の最期は実に武人らしい。ワシも、力を貸そうではないか。カルディネアにいたヴェルサスとかいう女竜術師は魔竜となったらしいぞ。混乱したカルディネアを叩くには都合良かろう!」
エクスヴァリオはエレミネアの名のもと、ヴィゼルニム帝国からの援軍も受けていた。
「これほど集めたとは。マークレットもこの壮観な部隊を見届けたかったろうに。ワシも、命をかけられる君主に出会いたいものだな……」
今。カルディネアには君主は居ない。だが、それでも意思を次いで戦い続けている。それはエクスヴァリオにとって何よりも脅威であった。
カルディネア側は「王のために戦うのではなく、自分のために戦う」ということで王命で戦争する敵軍に憤る描写が見られますが、じゃあ「カルディネア軍人が戦争しているのは、他でもない自分が戦争を望んでいるからなんだな」と考えてしまいます。
2001,11,29魔竜の出現にも関わらず、カルディネアでは宰相派と反宰相派が争っている。軍人は独自の判断で行動していたが、受けた傷を瞬く間に修復する魔竜は止まらない。
カルディネアの覇都エルマンキアには軍が集まっていた。表向きは魔竜対策だが、その実は宰相派と反宰相派の争いのためである。
宰相府には宰相であるツヴァイの他に、アンティスの実子アストラインも詰めている。彼らに意見する者もいたが意見を変えようという様子はなく、アストラインは「カルディネアにアンティスの子アストラインあり」と宣言した。
宰相派についたのは軍ではギガン・デーモン部隊を中心とする地上軍である。一方で「王のない世界」を目指したアンティスの意志を最大限尊重しようというのはラス・ドレイク部隊であった。双方はエルマンキアで衝突する。
エクスヴァリオとの停戦交渉は末端での小競り合いが続く中で、現在カルディネア制圧下にあるグリュンワルネで行われた。3年の期間限定で、グリュンワルネ領土の返還を条件として始められた交渉はやはり揉めたが、グリュンワルネ女王エレネミアが聖地シュトロハイゼンを統治するという条件での停戦合意へとこぎ着けた。
レディアス問題の交渉をしていた一同にも停戦の知らせは届いた。まだまだ問題は抱えているが、人々は停戦を喜ぶ。もっともそれはカルディネアが「王制」を許容したということでもあるのだが。
魔竜は一部の人間を取り込んだまま、エルマンキアに向かって進行していた。その外側でも、内側でも抵抗する人間たちがいる。魔竜の見せる「現実と非現実の交換」をよしとしなかった者は精一杯の抵抗をし、予想を超える力に魔竜は内側から崩れていく。
石柱は破壊され、魔竜も消えた。取り込まれていた者達も戻っていたが、竜術師ヴェルサスは赤ん坊の姿となっていた。魔竜の残した呪いにより、彼女は死ぬことなく、成長しては若返り、ふたたび成長するのを繰り返すのだろう。
カルディネアの内戦は宰相派の敗北となった。半死半生でなんとかアストラインと再会したツヴァイだが、アストラインは自らとどめをさした。それは彼に必要な「修羅」のためであるという。
それを見守っていたのは、東方剣士ミチナカ・コウシュウであった。エクスヴァリオに組みする彼は、事態の様子を伺っている。
「この停戦要求の成功は難しいと思っていたが、事態は厳しいようだな。このまま警戒し、交渉が決裂したらワシもすぐに動く」
停戦の話し合いが行われる中でも、このような小競り合いは各所で見られた。戦争を起こすよりも、剣をおさめるほうがよほど難しいのである。
「おい、お前はエクスヴァリオの者か?」
ミチナカ達に向かって、ドワーフ戦士が駆け寄る姿が目撃された。ドワーフは、手に木彫りの彫刻を持っている。ずっと彫っていたというのだ。
「これをエレミネア様に。停戦がなされたことに、儂から敬意を現すものだと伝えてくれ」
ネーベル・エルガーはエレミネアの像を贈った。自国が戻らない可能性もある交渉条件を持って来たエレミネアに敬意を表すると言うのである。
正直停戦してしまったのは意外でした。まあ情報収集した範囲が狭いところだったということもありますが。でも、結局アストライン主導の国になりそうな気もしますねぇ。
2001,12,31反宰相派に追われてアストラインに合流した宰相ツヴァイは、アストラインに討たれることでその役目を完結させることを望み、アストラインはそれに応えた。
3年間の停戦を迎えたカルディネアでは、軍政を含めた改革案が多数出され、決定されていく。王を中心としない国を目指すカルディネアは、アンティスの理想を追っている。アンティスやアストラインがいたからこそカルディネアについた者も多いのだ。
レディアスの今後を話し合うための会議場も新設された。戦いのない兵士を労働力としてかり出して建設された会議場のある街はファンタレスと名付けられ、多くの人が集まる会議が行われている。
レディアスは多くの条件をのみつつ、カルディネアからの独立を認められた。レディアスにおける王制の廃止はならないだろうが、レディアスはこの地での調停役を目指して進むことを宣言する。
カルディネアでの復興作業に努力する者達もいる。大きな理想を掲げつつも武力行使し、ドラゴンルーンを解放することで魔竜を復活させる原因を作ったのは間違いなくカルディネアであるが、今は平和な国を目指して活動している。ようやく訪れた平和を満喫する一方で、この平和が長くないと感じる者もいた。
アストラインはサンエイム地方、アンティセイアに向かっていた。かつての継承戦争で姿を消したアンティスを信じてアストラインを育て、いまもアンティスを奉じる騎士達のいる街である。そこにはアストラインを慕う者も多くいたが、宰相派であった者も乗り込んでいてアストラインに攻撃を仕掛ける。代わってそれを受けた黒騎士アルクライスは海に消えていった。
サンエイムの地で、アストライン達は一人の男と出会う。腕に燃える炎を持ち、青い衣を纏って大地を耕していた男は、彼らを「我が子ら」と呼んで迎えた。
「カルディネア……浮かれているといい。シュトロハイゼンはエレミネアを中心にまとまっていくのだ。そのとき、どう動く?」
シュトロハイゼンでカルディネアの動きを警戒して、治安維持活動に従事しているのは東方剣士ミチナカ・コウシュウ。彼は何れ、カルディネアは分裂の危機を迎えるだろうと予見していた。
「カルディネアにアストラインも不要なのであろう。しかし、王を廃して代わりになる規範などあるのか? 人は……案外脆いものだ」
三年という条件付の停戦は実は問題を先送りにしたに過ぎないと考えているものもいた。時間とのにらみ合いの中、それぞれの刻は過ぎて行くのである。
途中参加でのこのブランチ、「何故アンティスの理想が受け入れられているのか」が理解出来ませんでした。結局アンティスの思想をなぞっているだけのようにも思えて。このまま行くとアンティスとアストラインが神格化されて、祭り上げられる確率は高いように思えて。
2002,02,08