アルカトラス#1

天翔ける聖騎士


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第1回A4
歌劇「ローランの剣」第4幕
担当:緋村縺マスター

 自由世界の「魔窟」と呼ばれる惑星クーロン。ここでは生き残る力を持つものだけが生き残る、と考えているのはクレランス家のメッツァだけではないだろう。

 クーロンの大陸のひとつ、形が似ていることから「海月」ともいわれるエンクーロンは、最初期に廃墟から屑鉄を「採掘」して売る権利をもったものが成長し、権力を握っている。大小40の「名家」と呼ばれるうち、有力な3つがクレランス、バルカウ、フォンヴェルダーである。

 そのクレランス家の所有する土地に建つ娼館には、最近バルカウの若い連中が頻繁に通っているという。クレランスに寝返る相談の為という噂が流れているが、実はバルカウが土地を手に入れる為の自作自演だともいう。

 そんな話が流れる地下酒場には海賊家業に手を染めるものも出入りしている。その者の話では、女を娼館に売るぐらいなら倍を出すから自分にという老人がいたそうだ。30前の男の「肉」もいいと語るその老人は決して「味方」にはならないだろう。

 排水に汚れた人工湖の傍らの丘を刳り抜いて作られた街が亡命者や犯罪者の隠れ家となっているのはエンクーロンでは公然の秘密だ。そこで神話並みの噂となっているのは「伝説のサイバノイド」と呼ばれる存在だ。記憶を失ったものが妙に多いのは彼に関係しているのではないかと考えるものもいる。

 サイバーに対する「不当な扱い」を拒否するプロテスト派と、それに対するアンチ・プロテスト派の勢力争いも続いている。プロテスト派には「伝説のサイバー」がサイバーの理想郷を作る為に動いていると信じるものもいた。

 湖の岸辺には獣のような生活をする人間もいる。そしてそれを助けようと活動する人間もまた存在している。

 浮遊惑星イェルゼキルが近辺の宙域に現れたという未確認情報も流れている。ただ、一般のイェルゼキル人が紹介したところでは「そんな事実はない」と言下に否定されたということだった。

 宇宙では連邦の大規模演習の情報が流れていた。これが実は戦争のための準備ではないかと、海賊上がりの傭兵団はどこにつくかを悩み、傭兵団上がりの星間ボランティアは軍の指揮下に入りたくないと悩み、フリーのキャヴァリアー乗りも信条と待遇を考えて売り込み先に悩んでいた。

 高級住宅街の一角では、画家である富豪のレイ・ジハーが豪華な料理を振る舞いつつ、若い頃に描いた絵を探すよう依頼していた。若い頃に描き安く売ってしまった、さる高貴な女性の油絵だが「宇宙の倉庫」と呼ばれる惑星レイモンドロッテの画商が所有しているらしい。だが買い戻そうとしても「無くなってしまった」と言い張るので、探して欲しいということだ。レイモンドロッテにクレランスの別宅があったことを思いだしたものは、レイ・ジハーが名家の何れかと関係があるのではないかと感じていた。


今月の登場シーン:抜粋

《まさか、クラレンス家に寝返るための相談を重ねているだなんて……云ってしまってもいいもんだろうか》
 だが、実はアルテミシアも同様の噂を間きかじっていたのである。
「大丈夫。バルカウの本筋が出てきたところで、単に娼館が一軒潰れるだけだもの。この惑星の為には、かえっていいかもね!」
 戯けてみせるアルテミシア。酒杯を持って会話に加わってきたのはナンソーブ・エクライプである。
「さあ、それはどうでしょう?」
「どういう意味かしら」
 アルテミシアは疑念を隠さない。
「僕が聞いたところによれば、それはバルカウ家の自作自演だとか。つまり、こうです」
 ナンソーブは静かに語り始めた。
 館が建ち並ぶ裏通りの地主は、クラレンス家の系列である。その縄張りを奪うために故意に若手とクラレンス家と接触させ、「組織の身内に手を出した」ことを大義名分に裏通りに進出し、館ごと土地を奪い取る……これがバルカウ家の工作であると云うのだ。
「成る程。うまい手だ。それなら、バルカウ家の行為は内政干渉を防ぐためにやって正当防衛ってことになる」
 補足したのはリシャール・グレナディアである。現在のところ、どの名家にも雇われていないフリーの暗殺者だった。
「しかし、どうしてそんなことを知っているんだ。ナンソーブよ」
 リシャールの問いに答えてナンソーブ。
「何、この地下酒場の上役と顔見知りでしてね。此処だけの話、彼はそれなりの大物のようですよ」


 初回というのに情報てんこ盛りですね。それにからめてPCの紹介もしてあるし、さすが緋村マスターといっていいでしょうか。もっともざっと流して読んだだけじゃ内容つかみにくかったですが。要約してやっと流れがつかめたかなというところ。

2001,04,16
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第2回A3
歌劇「テュルパンの死」第3幕
担当:緋村縺マスター

 自由世界の惑星レイモンドロッテは乾燥した砂漠地帯と低温の極地の大陸しか存在せず、その特殊な気候ゆえに大規模な倉庫が立ち並んだ物流地帯として利用されていた。その倉庫惑星にある画商のもとに、画家のレイ・ジハーからの依頼を受けた者達が訪れていた。レイがどうしても買い戻したいという貴婦人の肖像画を最後に扱ったのが彼だったからだ。依頼を受けた者も画商も明かされていないモデルの素性には大きな興味をもっており、それがわかった時には画商に教えるという暗黙の了承の後、その絵がクレランス家にあることが示された。

 レイから直接モデルの素性を聞き出そうというものもいたが「知りあいのある貴婦人」であるという以外は「口止めされている」として口を割らない。貧乏学生だった頃に描いたというその絵は、いまではレイの代表作とまで言われているが、なぜに貧乏学生が貴婦人の肖像を描いたのかという疑問は残ったままだ。レイがクレランス家に繋がりがあるとカマをかけても見たが、笑い飛ばされるに留まった。

 繁華街にあるいくつかの娼館では血生臭い銃撃事件が起こり、多くの犠牲者が出た。バルカウ家がクレランス家の縄張りに手を出そうとした報復である。バルカウ家は宿敵であったフォンヴェルダー家と手を結び、ある商談が成立しているらしい。それが何なのかは極秘事項となっているようだが、政府も警察もないこの惑星を支配する彼らが何に対して知られてはいけないのかもまた不明だ。そしてバルカウ家は「クレランスへの復讐には力を貸す」と表明している。

 地下酒場では名前も明かさないメモによって依頼を受けているものもいた。それはクレランス家の資金源である麻薬の栽培される惑星メザレスへ行くことか、「銀色の髪の男」を殺せというものだった。クレランスの幹部のメアッツァやヴォルグは銀髪であるが、彼らにも代わりはいるだろう。

 異常な趣味をもつ老人との接触を試みたものもいる。煙草も麻薬も食べ物が不味くなるし、媚薬など札束で充分というその老人は麻薬惑星を潰そうと依頼した当人でもあるようだ。老人が欲しい3つのものは、一つはバルカウが呉れる約束となっており、二つめは老人にもよくわからない「銀色の髪」の死体。三つめはいつも腹を空かせているという騎士で、美味いものばかり食べると仲間うちで評判のようだ。レイ・ジハーが言っていたそうだが、なかなか手放そうとしないらしい。

 フォンベルダー家の主催する芸術賞の授賞式で、バルカウ家の下風のカラスカウ家の委員が狙撃された。続けてクレランス家の者を襲おうとしたサイバノイドが取り押さえられるという事件があった。フォンベルダー家の委員、ネル・レスコ−は「プロテストに好意的なフォンベルダーに対するアンチプロテストの恫喝」だろうというが、彼もまたサイバノイドであるようだ。そして一週間後にはフォンベルダー家の系列企業でアンチプロテストが一斉に解雇された。そして襲撃したサイバノイド達にはフォンベルダーからメザレスを潰せとの電文が届くとともに、襲撃したサイバノイドに爆弾をうめ込んだことが示唆されていた。

 浮遊惑星イェルゼキルが自由世界に現れた事自体は、目撃証言から間違いないようだ。ただ、既に今月には目撃証言も途絶えている。「神聖銀河帝国アーデンヒル暫定領主」の名前で通知を送ってみたところ、そのような封土は与えられていないので再びその名を用いた場合は処罰するという回答に続き、「仮に行方不明中のアーデルハイド陛下によって封じられたものでも正式に手続きされないうちは認められない」となっており、混乱があることがうかがえた。

 この惑星のピースキーパーの元に、アンチプロテストのサイバー達が協力を求めて訪れていた。人間との共存が目標であるというアンチプロテストであるが、それを受け入れるのはプロテスト派のサイバーやフォンベルダー家を敵にまわすことにもなりうる。返答を迷っているうち、記憶喪失で保護されていた女性がカラスカウの者達に連れて行かれた。病院はカラスカウと同じバルカウ家の一門、リーグロッドの系列であったらしい。

 郊外にあるクレランス家の別荘は麻薬密売の拠点であり、ここに当主が訪れることはない。ここをまとめているのはメアッツァであるが、7年務めた彼も新参者でしかなく当主にあったこともない。そのメアッツァに報酬として与えられたのはレイモンドロッテから送られてきた女性の肖像画であったが、これが彼に対する脅しであることも彼には理解できた。それを見ながら最近の動向を聞いた暗殺者は、行方不明だったクレランス家の次期当主らしき人物が発見されて秘密裏に確認中との情報を得る。そして、絵を心配してのことか室内から灰皿が消えているのに気がつくのだった。


今月の登場シーン:抜粋

「その情報は裏が取れています」
 淡々と語るのはナンソーブ・エクライプ。
「僕がクラレンス家の縄張りを中心に調べたところでは、バルカウ家とフォンヴェルダー家の間で、ある商談が成立したとか。どんな商談かは皆目分かりません。名家の中でも、極秘扱いになっているようです」
 肯くトウジ。バルカウ家の一員として採用された彼にしても、初めて聞く事柄であったからだ。バルカウ家がクラレンス家を相手に策謀をしかけてきた裏には、フォンヴェルダー家を味方につけることに成功したという自信があったのだった。バルカウの家中には、クラレンス家恐るるに足らずという雰囲気が生まれているに違いなかった。
 極秘事項には、極秘とすべき事情がある。ナンソーブは思いを巡らせる。
「両家には誰かに知られてはいけない秘密があるように思います。政府も警察も裁判所もないこの魔窟で、彼等に恐れるものなど何もない筈なのに。一体、誰に知られてはいけないのか」
「ただの情報収集は、既に限界かもしれないわね。多分、真実を知るための材科は、既に私達の眼の前にあるのよ。ただ、誰も気付かないだけ。気付いてあげられないだけ。あの娘達がどんな思いをしながら生きてきたか、気付いていた人がどれだけ居たか!」
遠い眼をするアルテミシア。
 ナンソーブは館の奥を見遣る。
「誰も、犠牲者を増やしたい訳ではないのです」


 さて、第2回。マスターからの堂々とした挑戦をされていますね。もう情報は出してあるから、推理しろと。多少強引ではありますが、マスターがして欲しいことが見えますね。

2001,05,22
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第3回A3
歌劇「アストルフォの槍」第3幕
担当:緋村縺マスター

 クラレンス家の麻薬密売人メアッツァの屋敷にはレイ・ジハーの初期の傑作とされる「ある貴婦人の肖像」がある。メアッツァはその肖像画の謎の貴婦人の正体を知っているともいう。それが女帝アーデルハイドだという噂もあるが、十年前の作品に描かれているのは少女ではなく、その可能性はないといえる。メアッツァがその女性と関係があるのかという問いに対しては、関係があるが、それはあの絵を模写してみればわかると答えた。うまく模写できたら何もかも教えてやるというメアッツァは心なしか楽しそうだった。

 メアッツァが最近連れ去られた女性と血縁者ではないかと思い、残された女性の毛髪とメアッツァの唾液の付着したであろう食器を手に入れ、病院に持ち込んで検査をしようとしたものがいる。だがフォンベルダー家に繋がりのあるその病院ではそれを黙殺し、彼を精神病患者として「入院」させようとしたのだった。

 連れ去られた女性の救出を願い、ピースキーパーとサイバノイドが協力をしようとしていた。だが、施設を襲ったものを捕えて償いの為に協力させようという望みを持ったことで、その者の捜索の為の時間がかかってしまう。その過程でバルカウからフォンベルダーへ渡された女性は一人ではなく、どこかへ集められ何らかの教育をされているということをつかむが、逆に人捜しをするサイバノイドという情報も名家に与えられ、彼らは襲撃を受けることになる。機関銃の銃撃はサイバノイドでなければ確実に死亡し、救助が遅ければサイバノイドとて死亡していただろう傷を負う。

 ピースキーパー達は結局、アンチ・プロテスト派のサイバノイドのと協調をしないことに決定した。協力者を拒むべきではないといっていた者たちも、先の襲撃で協調することの危険を実感している。もっともピースキーパーが自らの安全を優先するのは偽善ともいえるだろう。それは彼らも十分承知だが、現実と理想はまだまだ離れている。

 クラレンス家の麻薬の生産地である惑星メザレスにはバルカウやフォンベルダーの意思を受け、それを潰そうという者達がやってきていた。ここの管理者でゲルフィナという通り名を持つ、本名ブロウ・マクファエルという男はメアッツァにはいい感情を持っていないらしく、メアッツァに関する情報を集めるのは比較的容易だった。どうもメアッツァは自分の報酬の中からクラレンスには内密に資金援助をしているところがあるらしい。

 そして芥子畑への放火と、その対応に追われる隙に行なわれた工場爆破は成功した。ゲルフィナは脱出途中にメアッツァを疑う報告を電文したが、その後キャヴァリア−に撃たれて四散する。麻薬生産量は半減し、回復には丸3年を要すると予想された。名家ではそれぞれこの事を重視し、バルカウとフォンベルダーは功績を上げたものを幹部に取り立てるなど、今までの秩序が崩れ始めている。

 惑星レイモンドロッテの画商のもとで「ある貴婦人の肖像」のモデルとなった人物の成長予想図を作成しようとしたものがいる。モデルの正体に興味を持つ画商はそれに協力するが、10年の間の可能性はその種類を5万種にも増やしていた。

 クラレンスの屋敷を襲撃しようとした者たちが数人、返り討ちとなって捕えられた。その者達は、その一人が載っていたキャヴァリア−に押し込まれて海に沈められた。バルカウの手の者によりかろうじて引き上げられた時には4名が溺死、生存者は3名だけであった。「軽い陽動にはなった」というバルカウの者は彼らに援助を約束した。

 この政府の存在しない惑星には戸籍も存在せず、名家のものが誰であるかを調べるのは容易ではない。だが各企業は彼らの息がかかっている物が多く、クレランスの末端のデルライン家への接触に成功したものもいる。当主のお目付役の者は「バルカウの娘によく似ていた」と語り、実際の絵を見たことがあるという当主も「初恋の女性に似ていた」と答えた。

 レイ・ジハーは彼の最新作について、そのモデルとなった青年に語っていた。絵について語るのが嫌いではないという彼が「ある貴婦人の肖像」について語らない理由。いや、「語れない理由」を導き出した者がいた。あの絵は実は彼の弟の作品であり、そしてレイが苦労して学んだ絵画をはるかに超える傑作だったのだ。レイはその才能に嫉妬し、苦悶する十年を過ごしていた。その間に描かれた百数十枚の絵画はそれを超えるものではない。

 メアッツァはクラレンス本家に呼び出されていた。デルラインの当主はすべてを了解し、メアッツァと絵画については二度と語らなかったという。画家の最新作は市場にでる前に高値で購入され、身分を明かさぬ購入者は「命が惜しければこの絵を描いたことは忘れた方がいい」と脅していったという。画家はその金で殺し屋を雇った。


今月の登場シーン:抜粋

「まだなのですか。もう、三時間にもなりますよ」
 ナンソーブは憤り、病院の受付に喰ってかかった。
 受付の女性は事も無げに云った。
「何のことでしょうか」
「僕が預けた毛髪と食器の検査のことです。此処の医者に調査を依頼して……そう、あの人です。あの奥に居る医者です!」
 指し示した先に居る医者は、不思議そうに首を傾げた。
「さて。私は貴方から何かの依頼を受けた覚えなどありませんが。どうされましたかな」
「何をとぼけているのですか。僕は、確かにあなたに女性の毛髪とメアッツァが使った……」
「おかしなことを仰る方だ。いえ−−ははあ、成る程。思い出しましたよ。訂正しましょう、貴方には見覚えがあります」
 前言を翻した医者に、安堵するナンソーブ。
「そうでしょう。早く検査結果を教えて下さい」
「ナンソーブ・エクライプ。貫方は精神病院から脱走した患者だ。麻薬の過剰摂取による幻覚症状が酷く、ありもしないことを口走ることがままある」
「なっ……!?」
 ナンソーブは驚樗し、医者の瞳を凝視した。
「もうすぐ、フォンヴェルダー家の守衛が来ます。貴方を元々の病院に連行してくれますよ。クックックッ……!」
 填められたのだ。
 捕まったら終わりだ。一生涯、偽りの精神病院の看板をつけた牢獄から出られなくなる。ナンソーブは病院の扉を閉じようとする事務員を殴りつけると、全カで走った。
 女性を浚ったバルカウ家とフォンヴェルダー家の連携に思い及ばなかったのは、ナンソーブの過ちであった。走り去りながら、ナンソーブは人伝てに間いた誰かの科白を思い出す。
《しかし、名家の方々の力を侮らないことです。くれぐれも、ね》


 前半山場であろう第3回。かなりの展開を見せてますね。正直いって情報に溺れそう。なんとか出来たらいいのですが。

2001,06,18
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第4回A3
歌劇「守護聖者リナルド」第三幕
担当:緋村縺マスター

 自由世界の惑星クーロンの若き俳優アルーディスは、見知らぬ人からの「才能を惜しむ、薬を止めた方がいい」といった手紙に励まされていた。

 クレランス本家からの呼び出しを受けた麻薬密売人メアッツァは「ある貴婦人の肖像」について「投影された何かを探ろうとする絵の鑑賞者が居るであろう事を最初から想定し、その想像力に働きかけることを意図して描かれた」作品だという。

 そのメアッツァに話を聞いていた者は、他の者の手によってフォンヴェルダー家に連れ去られる。そこでは掠われたものに「贅美を尽くし、肉と酒を与えよ」との指示が出されていた。

 「ある貴婦人の肖像」を模写しようと集まったものたちは、作者やモデルの正体に思いをめぐらせつつ筆を進めていく。メアッツァはレイ・ジハーの弟ネロスではないか、モデルは亡き母を描こうとしたものではないか、などと。直接メアッツァに問いただした者は「偉大な想像力」との返答を得る。そして模写が完成に近付いた時、それが模写した当人にどことなく似ているのに気が付いた。

 集めた情報を手に倉庫惑星レイモンドロッテの画商の元を訪れた者もいる。不完全な情報ではあるが、それと交換に浮遊惑星イェルゼキルがクーロン近くに出現し、少なくともレイモンドロッテには寄らずに去って行ったという証言を得た。

 本家に向かっているメアッツァには他家の者達も近付いてくる。それは最近になって各家に雇われたものがほとんどで、情報を聞き出すのが目的のようだ。先の麻薬惑星の襲撃で失業したものを援助するため住所を聞き出したものは、メアッツァの余剰資金の使いみちが「夢を買っている」ということを聞いた。また、レイ・ジハーと弟の写真を見せられると「こんなものがまだ残っていたか」という言葉を漏らした。しかし平穏は続かず、銃声が当たりに轟き鮮血が飛び散る。

 レイ・ジハーの屋敷では、彼が弟ネロスを銀貨2枚で売ったことが指摘されていた。そして長じてはクレランス家で幹部にまでなったのではないか、と。メアッツァの写真を見せられたレイは、それが弟であると確信したようだ。自分の絵とまとめて売った時、銀貨2枚しか与えられなかった絵が世間から評価される度に傷つく自分が、仕返しに弟を傷付けようとした際に見た哀れみの表情が憎しみを芽生えさせた。

 絵を破り捨て、ネロス・ジハーを殺す事で解放される。そう思った彼は殺し屋に依頼を出した。そして「ある貴婦人の肖像」を持ち出してきたというものが現れる。だが、その絵に描かれていたのはメアッツァの肖像であった。愕然とする画家はその者に短剣で刺され、絶命する。それは「倒錯した情愛の報い」であろうと噂され、真実を知るものは当人だけであった。レイを解放するためと刺したその当人は、レイがメアッツァの絵を見た時に浮かべた喜びと懐かしさをたたえた表情を覚えていた。

 バルカウが行なっていることについて調べているものもいる。その途中で脱走者騒ぎに出くわしたものは、そのサイバーの少年が死の間際に「伝説の…フレンツェンに…彼はギデオンFで…」と言い残すのを聞いた。

 ピースキーパー団体「天空の使徒」の一員は拠点に支援を要請したが、それぞれ10人ほどの農業技術者と加工技術者、キャヴァリア−1機分程度の資金を得るにとどまった。それでも活動を続け、やがて虐げられていた娼婦たち13人が後に続くようになる。いつからか彼女らは「教団」と呼ばれていた。

 メアッツァを襲ったのはクレランスの刺客だった。不用な抗争を避けるために他家の者が去るのを待っていた彼らは、一斉に銃撃を始めた。麻薬惑星の壊滅時、撃落とされる前ににゲルフィナが本家に告げたメアッツァ関与の可能性を本家は信じた。メアッツァ自身が麻薬取り引きに乗り気ではないのも知られていたし、メアッツァ自身も積極的な忠誠心を見せようとはしなかった。

 クレランスとの繋がりを絶たれたメアッツァ…ネロスは周りを巻き込まぬようにその場を逃げ出した。居場所の無くなった彼が思い出すのは幼い日の兄との思い出。彼の描いた絵が兄のものとして評価され、それゆえに兄が苦しんでいたのも知っていた。だから憎しみを許せた。それは彼の兄に向けた愛であるのは間違いない。傷付きつつもレイの元に向かうネロスは、既に兄が死んでいるのを知らない。だが、殺し屋の放った銃弾はネロスを兄の元へと導いた。

 メアッツァの住んでいた屋敷の執事は、彼が大事にしていた手紙に目を留めた。それは彼が資金援助していた若き芸術家達の感謝の手紙。それは執事によって火にくべられ、もう誰も知ることはない。執事は自分の食事を三日に一度に減らすよう申し出て、クレランス家はそれに応じた。やがて栄養失調で死亡した彼の元に渡るはずだった食料は、巡り巡って少年たちの飢えをしのいだはずだ。


今月の登場シーン:抜粋

 倉庫惑星レイモンドロッテを訪れたナンソーブ・エクライプは、『ある貴婦人の肖像』に関する情報をこの殺風景な在所に住む画商に伝えた。
「絵の作者は、恐らくレイ・ジハーではありません。彼の弟でありましょう。これに最初に気付いたのは、Kとか云う私立探偵です」
 更に、ナンソーブはその弟の正体に対する類推や、画題と推定される人物について画商に教えた。いずれも決定的ではないものの、画商は興味深そうに聞いていた。
「情報の礼が必要ですな」
 画商はナンソーブの目的を察していた。
「されば、です。この倉庫惑星はイェルゼキル等の発案で創られたものと聞きました。この間、秘密裏に浮遊惑星が訪れた時、何かを持っていった、或いは預けていったのではありませんか」
 ナンソーブの聞いに、画商は顔を蹙めた。
「されば、正確な情報をお伝えしましょう」
「是非とも」
「浮遊惑星はレイモンドロッテに立ち寄っておりません。神聖銀河帝国方面から魔窟クーロンに現れそして去っていった。私が知るのは、それだけですな」
 だとすれば、倉庫惑星との間で何らかのやり取りがあったとは考えられない。
《僕が深読みしすぎたのでしょうか?》
 画商が嘘をついているようには見えなかった。
 しかし、これが偉大なる収穫に繋がる種であるかもしれぬという感覚は、ナンソーブの心を捉えて離さなかった。


 前半終了。とりあえずは区切りがつきましたね。伝説のサイバーなどが伏線として残されていますが、感じとしては2部のメインになるのかな。

2001,07,16
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第5回A3
歌劇「ブラダマンテの翼」第三幕
担当:緋村縺マスター

 蒼い月光の下、白い大地の墓標に供えられた紙片には、人の運命を「織った」少女の言葉が書かれていた。変らなかった運命を、それでも「織った」償いとして、彼女は自らを「織って」それまでの人生を終えた。

 「彼はギデオンFで…」と言い残して死んだ少年サイバーの言葉に何かを感じ、秘密惑星ギデオンFの手掛かりをつかむため、惑星ブルーリアに降り立った者たちで、フォンベルダー家に関りのある者たちは、本家から手を引くようにという伝言を受け取る。「真実」に迫ろうというなら名家との対立を考えなくてはならない。

 相談しながら整理した現在の状況は、フォンベルダー、バルカウと共に鼎立していたクラレンス家が、更なる力をもって自由世界に「クラレンス王国」とでも言うものを作ろうとしているというものだった。今までのバランスを失いたくないフォンベルダーとバルカウは結びつきを強めつつある。

 ある騎士を、その独特な食生活の嗜好のために捉えているフォンベルダー当主のゾフィルスは、騎士が彼に恨みを持つものではないかとの噂を確認に来た。その様子は見られなかったものの、ゾフィルスは「晩餐」を来月に決める。その騎士のキャヴァリア−は、ある者によって強化されて来るべき時を待っていた。

 「教団」と呼ばれるようになったピースキーパーのリーダーは、汚染された海域を避けて漁業の拠点とする為に、船で1時間ほどの無人島を手に入れた。そこには帝国の人間も「援助」と称して医薬品などを運びこんでいた。

 先日勢力争いから殺された麻薬密売人メアッツァに雇われていたものは、直接の加害者を決闘で打ち破ることで、メアッツァを慕っていた部下たちの信頼を勝ちえた。公然とクラレンスに叛意を示した彼らをクラレンス家は裏切りとし、バルカウとフォンベルダーは「ファントム家」に加勢すると戦闘要員をおくってきた。狙っているのはクラレンスとファントム家の潰し合いだろう。

 サイバーの少年が言い残した言葉について、エンクーロンで地下活動をするサイバーから「フレンツェンに会いたくばブルーリアへ赴け」と教えられた者もまたブルーリアへとやってきていた。その中で名家と関りのない者達数人は、別々に予約したはずが一つの宿屋の同じ部屋に割り当てられていたことに驚いていた。部屋で状況を整理していた時、いつの間にかもう一人の少女から話しかけられる。ギデオンFでサイバーの解放活動を続ける闘士の一人アルストロメリアと名乗る少女は、組織から出迎えを命じられたという。出立を急がせる彼女に従って宿を出て30秒、その宿屋は炎を上げた。問いただす一同に、彼女は「白夜の爆弾魔」と呼ばれているとだけ答えた。

 ある惑星は、一人の科学者の壮大な実験の果てだった。人の記憶の糸を「織る」者、織姫。地下に封じたその能力は、今でも眠っているのだろう。


今月の登場シーン:抜粋

 誰も居ない筈の島の砂浜に、一人の青年の姿があった。
 ナンソーブ・エクライプである。
「多少の物資を用意させて頂きました。何、遠慮される必要はありません。あなたのような方に手助けをしたいだけなのです。僕も、そして僕の主である帝国も」
 帝国諜報員の身分を明かすナンソーブ。
「では、失敬。また、近いうちにお逢い出来るでしょう」
 そう語ると、ナンソーブは帝国貴族風の格式張った礼をして、後方で待つヘリコプターに飛び乗った。
 風を切る音とともに、ナンソーブを乗せた機体は大空高く舞い上がる。後には、医薬品と栄養剤が詰められた木箱の山が残されていた。


 第2部開始となり、舞台がいくつかにわかれましたね。これも絡み合ってはいると思うのですが、RA見ると大雑把に4つ。その内の2つはPCさんがメインです。要約中ではPC名を出さない基本方針なのですが、さすがに「新興名家」のファントム家は名前を挙げさせていただきます。

2001,09,17
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第6回A3
歌劇「少年公爵ユオン」第三幕
担当:緋村縺マスター

 自由世界の秘密惑星「ギデオンF」にはサイバー達が名家に対抗する組織があるようで、接触してきたサイバーの少女アルストロメリアに案内されてそこに向かう一団があった。その構成はサイバーばかりではなく、単なるサイバー集団ではこの事態に対抗できないことがうかがえた。

 フォンヴェルダー家の当主の老人は特殊な食嗜好を持つことが知られている。今回その宴のテーブルに上げられようとしているのは、当主が彼を「かつて母親を食べた時に逃がしてしまったクラレンス家に通じる子供」ではないかと疑っている青年であった。

 フォンヴェルダー当主ゾフィルスには彼なりの考えがあった。人間のみが特別な「動物」であろうはずが無い。ならば、人を食料とし、家畜としても自然ではないか、と。そのように管理することが自然から外れているのには気がつかずに。

 そして結局その考えは受け入れられることなく、青年を助けようという動きの中でゾフィルスは死亡、新たな当主が立つ事になる。新当主はゾフィルスと違い、サイバーであってもプロテスト思想を持つものでないなら地位も与えるという。

 アルストロメリア達の向かうギデオンFはフォンヴェルダー家の所有する惑星である。彼女を尾行している者達により、アルストロメリアの勢力がフォンヴェルダーに対抗しているのも調べがついていた。その道中、アルストロメリアは「伝説のサイバー」は組織が作り上げた偶像だという。自分の過去を知りたがるサイバーには「墓の下の人」なら何か知っているかもといい、宇宙の墓場、惑星セミトリアスのことを告げる。

 そして、サイバー組織がサイバー以外を必要とする理由は、「サイバー対人間」ではなく「名家対名家」の構図に持ち込みたいことで、それは前者が成り立たなくなっている、すなわち「敵にもサイバーがいる」のだということも明らかになる。ゾフィルスの進めていた「家畜化された人間」には洗脳されたサイバー達も含まれており、食用でこそ無いもののゾフィルス亡き今もそのシステムは引き継がれている。

 ピースキーパーの一人がはじめた活動は、今やかなりの人間を巻き込むこととなっている。本来は自給を目指して島に移り住んでいるのだが、集まった人々は代表者に現体制の改革の望みを投影している。それは新たな権力であるともいえよう。

 クラレンスから離反した一党は他の名家からの援助を受け、戦闘状態に入っている。その戦闘に参加したエルフィーナ・クラレンスは、離反した一党の党首がクラレンスの本来の跡取りであり、ゾフィルスに食われたはずの自分の従兄妹のヴィットーリアであるといっている。クラレンスの現党首の老婆はそんなことがあるはずがないといっているし、幼い頃生き別れた従兄妹にとらわれているエルフィーナには家を継ぐのはムリだと判断を下していた。

 イェルゼキルの商人の姿はギデオンFでも見かけられた。広く交易をしている彼らにとって、フォンベルダーのやろうとしていた特殊な政策に肩入れしていると見られるのはダメージになるだろう。ならば、それに介入していたのも十分考えられる。いま、この惑星に非サイバーも集まりつつあるのもその裏工作にのせられているのかもしれない。


今月の登場シーン:抜粋

 一人の青年が孤児達の傍らを通り過ぎる。
 僅かばかりの金銭を空き缶の中に投げ入れると、青年は云った。
「あなた達には今の生活を変える力があります。いや、もしかしたら、この銀河を変える力すらあるかもしれません。その機会を得たいなら、ヴァレリアの教団の元へ行きなさい」
 優しげにそう呟くと、青年は砂塵の中に消えていった。

〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜

 砂塵に覆われた街。
 金銭を孤児達に与えた青年は、喉の渇きを覚え、懐中の水筒を取り出す。
 その刹那、一通の手紙が地上に落ちた。
 ヴァレリアから送られた手紙を拾い上げ、砂挨を払って大事そうに仕舞うナンソーブ・エクライプ。
 水筒に口をつけると、潮のような匂いが鼻腔を突いた。
 それは、名家の人々が忘れているであろう潤いと芳醇さに満ちた水の香りだった。


 あらためて整理すると、クラレンス当主があきらめているヴィットーリアは、フォンヴェルダー元当主は逃がしてしまったと思っているんですね。で、エルフィーナはそれがヴォルグさんだと多い、ゾフィルスはヴィントさんだと思っている、と。

2001,10,18
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第7回A3
歌劇「大逆のガヌロン」第三幕
担当:緋村縺マスター

 自由世界宙域の魔窟クーロン、倉庫惑星レイモンドロッテ、麻薬惑星メザレス、果樹惑星ブルーリアを巡り、遂に秘密惑星ギデオンFに至る。そこから「銀河の墓場」とも呼ばれる惑星セミトリアスへと向かう一行は、案内する少女レジスタンスのアルストロメリアがペルビアンリリーとも呼ばれる存在で、「伝説のサイバー」である可能性が高い人物だと気が付いていた。そのアルストロメリアは一行の一人が、自らに3年後にここに帰るように暗示をかけた「織姫」だといい、彼らの行動は今までに彼女たちのエージェントが影で護衛していたからこそだという。

 到着したセミトリアスは故郷を失った者が眠る地だった。そこにはサイバーの生みの親と言われるミヤマ博士の墓もあった。そして改造されたサイバーこそが進化した人類であるというミヤマ博士の意思に共鳴した脳医学の天才、ヤマザキ博士の墓が隣に、更にその隣にはアルスロトメリアが「織姫」だという、一行の一人の名前があった。彼女はヤマザキ博士の娘で、ミヤマ博士の娘であるブリュンヒルト=アルストロメリアと共にそれぞれの父親の夢を受け継ぎ活動していたという。母親を食べられる瞬間を目撃して発狂しかけていたクラレンスのヴィットーリアに洗脳を施し、記憶を消したのも彼女だという。だが、彼女の記憶は依然として戻らず、おそらくは彼女自身が二度と戻らないようにしていたのだとブリュンヒルトも気がついた。彼女が去った後、技術者の多くは組織を抜けた。その中には名家に雇われ、サイバー・パイロットを作ったり人間食物連鎖実権に関っていたものもいるという。

 クレランス家と抗争を始めていた新興名家の党首は、エルフィーナ・クレランスによって跡継ぎのヴィットーリアであると見られていた。そして彼自身もクレランスに出向き、自分がヴィットーリアだと宣言した。当主である老女はそれに応え、彼を新たな当主として継承手続きを行なった。そして新当主はバルカウと連携してフォンヴェルダーを叩くと宣言した。だが、それはバルカウにとっては今まで同盟を結んでいたフォンヴェルダーを裏切ることであり、エルフィーナをバルカウに迎えること、サイバノイド駆逐に協力すること、フォンヴェルダーの持っているギデオンFの利権をバルカウが獲得するのを支援することの2つ以上を受け入れるように求められた。

 フォンヴェルダーではバルカウの持つ洗脳技術を本格的に手に入れようとしていた。クラレンスの当主交代についても情報を得ており対策もしているというのが、当主の使者の幹部に向けた言葉だった。

 ギデオンFの洗脳サイバーの管制塔について手に入れた情報をもとに、侵入工作がなされていた。しかし顔を知られていたものの情報収集に対して与えられていた偽情報により、侵入したものは捕えられる。また、脱出経路である宙港を押さえられ、セミトリアスから帰還していたものによりその情報も伝わってしまった。そして洗脳サイバーによるブリュンヒルト達を狙いとしたサイバー狩りが始まる。

 「教団」には善良とはいえない者達も流れてきて、治安がいいとはいえない状況だった。それに対して繰り返し教え諭し、人々が生活に当てはめることで自然と生まれたのが「人と人とは目に見えないもので『魂の座』と繋がっており、それとの関係が切られると死ぬか、死んだも同然となる」というものだった。それが浸透するにつれ、人との繋がりを切る犯罪行為は減っていた。

 教団の島で今は猟師として働いているキャヴァリアーパイロットは、フォンヴェルダー家で食べられそうになっているのを切り抜けてきた男だった。その前に現れた老女は、彼の名前を「御前を幸せにしてくれる名前」と言って去って行った。


今月の登場シーン:抜粋

 人間が起こす土木は侮れない。
 帝国諜報員ナンソーブ・エクライプは、そう思った。
 ギデオンFでサイバーを監視する管制塔の構造図を入手したナンソーブは、その内容に目を見張った。

〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜

 もっとも、僅か二週間という短期間で調査がほぼ完了したことはナンソーブ自身にとっても疑念であった。
「或いは、陰でイェルゼキルが動いているのかもしれませんね。いずれにせよ、構造図はギデオンFのサイバー達に提供しましょう。負傷者は、ヴァレリアの教団に導くよう手配しますか」

〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜

 ナンソーブは諜報員でありながら、かつて名家と接触し、その顔を知られていた。


改めて「裏方として目立つ」ことの難しさを教えられてしまいましたね。ところで、今回はPL側の事情もありアクション期間中に殆どなにもできていません。要約作業をしているのがアクション〆切前日〜当日早朝ですし。

2001,11,20
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第8回A3
歌劇「緊縛のル・ダノワ」第三幕
担当:緋村縺マスター

 かつて、戦争で流通経路が破壊されて帝国でも連邦でもない「自由世界」が生まれた。しかし無限の自由は自由ではなく、人々は彼らを管理するシステムを必要とし、これまでは「名家」が利潤と引き替えにその役割を担ってきた。そして流通が回復しつつある現在、自由世界に名家は必要なくなりつつあった。

 名家のクラレンス家とバルカウ家は同盟を結び、クラレンスは当主親族のエルフィーナ・クラレンスをバルカウ家に預けることと、フォンヴェルダー家の持つ秘密惑星ギデオンFの利権をバルカウが握るのを認めることを受け入れた。これはフォンヴェルダー家がバルカウ家にとって「商品の卸先」であったため、それを解消する代償といったところだ。バルカウ家の「商品」とは「人間」であるのだが。

 そしてクラレンスはバルカウのギデオンF攻略にも協力を申し出る。サイバーと折り合いの悪いバルカウの代わりにクラレンスが交渉し、戦力も投入する。

 また、この席にはイェルゼキルの商人も同席していた。現在ギデオンFにとらわれている同胞を救助してもらえば相応の謝礼をするという。ただ、彼ら自身が傭兵を雇って動くほどには価値を認めていない。そして彼らがフォンヴェルダーにも資金提供していたのは「経済による人類社会への貢献」だといい、それは戦争が人類を進歩させるのと同様に必要なのだという。彼らは名家による「戦争」を求めているようだ。

 フォンヴェルダーではギデオンFから洗脳技術者を連れ帰っていた。また、本家からの指示では「現在自由世界を訪れている女帝派の騎士数人をバルカウ家に接触させる」話を元にイェルゼキル商人を恫喝するようにという指示があった。何かの弱みを握っているらしい。そしてニュースではクラレンス家から出てきたバルカウの車が暴走し、死傷者が出たという。そのうち重態である人物の名はニュースでは明かされなかったが、エルフィーナであるという。

 イェルゼキル商人は情報操作に長けている。いま、彼らは帝国と連邦の戦争が早期に終結思想だという情報を握っているがそれを明かさずに、そこに流れるはずだった武器を名家同士の抗争に回そうとしていた。

 ギデオンFでは、かつて「織姫」だった者を含む一行が逃亡生活をしている。「サイバーは人類の進化した姿」というヤマザキ、ミヤマ両博士の思想に共鳴して現地で活動していた老サイバーは、ミヤマ博士の娘アルストロメリアから止められていた、織姫自身の残した資料を本人に見せることを決意する。そのチップから吐き出された暗号は記憶を失っている本人にも読めたが、それは織姫自身がそう仕組んだからだ。その内容は記憶消去の方法と、それを回復させる「鍵」について。この技術を進めれば洗脳解除も可能だという。そしてそれができる帝国のフェルモッサ科学卿にこのチップを渡すことが織姫自身の「鍵」だという。だが、そのシェルン・フェルモッサは既に粛正により死亡しているはずだ。

 ギデオンFのフォンヴェルダー家の幹部は逃走中の「織姫」やアルストロメリアことブリュンヒルトに生死を問わずで賞金をかけ、サイバーの排除も命じた。だが、脳科学者のワカサは理想もなく「運転手に対する暗示」などの抗争のために自分たちの技術が使われているのに研究者としての意欲が薄れていると反発、その結果、アルストロメリア達を引き渡せばサイバーは助けるとの告知がなされた。

 だが、ワカサは既にイェルゼキルがクラレンスとバルカウについたのに気がついていた。そして虜囚となっていた者を解放する代わり、自分たちを自由世界から逃がしてもらうように持ちかけた。他の名家やイェルゼキルにとらわれたくもないし、ブリュンヒルトには彼女のサイバー化を進言したことで対立している。彼女がサイバー化しないのは父親の意志であり、それを覆そうという彼らを認めることはないだろうということだ。そして彼女が「伝説のサイバー」であるため、伝説のままなのだという。

 ギデオンFにはクレランスとバルカウによる攻略部隊が到着しつつあった。それを受け入れたブリュンヒルトは、部隊の中にクラレンス当主の顔を見たように思ったがその人物は党首待遇は受けていないし、現党首とは明らかに別人である。ただ、記憶を操作された彼の正体に気がついているのは周囲の人間だけではないようだ。

 圧倒的な数により、ギデオンFは攻略された。幹部は陥落前に逃走し、虜囚となっていた者達もワカサと逃亡、潜伏しているのだろう。解放されたサイバー達は技術者を確保しているバルカウの元へ送られることになる。だが、ギデオンFに彼らの指導者の姿はなかった。

 惑星クーロンの離れ島で自給生活を始めていた「教団」は、再びエンクーロンでの啓蒙活動を始めていた。人々を助ける巡回活動はいつしか「愛の行進」と呼ばれる。将来的に「国家」となろうというクラレンス家は系列企業が若干の援助を行い、ギデオンFを失った現在では他家との衝突を避けたいフォンヴェルダーは静観。バルカウは一度は会合を求めたが、数日保留しているうちに接触しなくなっていた。

 教団内部では「名家」の影響を受けた派閥もできはじめていた。クラレンスの影響を受けた一派は独自に教会を築き、活動拠点としようとしているという。それは「教団」と関係の深い連邦の新教会系ではなく帝国系の神聖教会だという。それに危機感を持ち代表に進言する活動家は「商人」と密会しているという。

 教団にはバルカウの酷使から逃れてきたという者も保護されているが、それにはおそらくクレランスの手引きがあったのだろう。それを思う代表者の横顔に、教会建設派の活動員は、バルカウで酷使されていた「貴婦人(レディ)」と称される本名不明の女性に似ているとの感想を漏らした。「貴婦人」は美しく気丈で、それ故に憎まれて虐待されていた人物だという。舌を噛み切ろうとしたこともあるが取り押さえられ、罰として拷問を受けていたともいう。

 バルカウではエルフィーナが入院したことで計画の変更を余儀なくされていた。バルカウは彼女の身柄のみならず、その記憶を別人に移植してやがて来る禍を逃れようとしていたのだ。そのために対象となる人物と「記憶の型」が相似した者が必要で、その一人がエルフィーナ。他に候補としてあがっていたのは「教団」代表者とブリュンヒルトだった。

 そしてバルカウはギデオンF攻略の混乱に紛れてブリュンヒルトを拘束していた。彼女の記憶は奪われ、ミヤマ博士の望む「サイバーでないオリジナルの人間の肉体と精神の標本」としての彼女の存在意義も同様に奪われることになった。精神を破壊されてなお生き続ける彼女の眼からは涙が溢れ続けているという。


今月の登場シーン:抜粋

 流氓の果て、ナンソーブ・エクライプは下唇を噛む。自らもたらした情報がマキやレフィードを窮地に陥らせたことを知らされたからである。
「僕としたことが、偽の情報を掴まされるとは。皆さんに申し訳なく思います」

〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜

「アイリさん。僕は敢えて管制塔に通じる下水などを調査してみようと思います。僕の動きの裏を敵が突いてくるのなら、陽動になる筈ですから」
 ナンソーブの提案に、アイリは静かに領く。


 第2部完の8回目。どうやら名家は変革するしかないという状況になっているようです。帝国諜報員としては親帝国派に利益をもたらすようにするべきなのでしょうかね。

2001,12,18
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第9回A3
歌劇「ロジェロの系譜」第三幕
担当:緋村縺マスター

 自由世界の惑星クーロンの大陸エンクーロンでは、戦争から帰ってきた男が路上を行き交う人々を眺めていた。

 エンクーロンの名家の一つバルカウ家は、ニューグラハム独立戦争時にツォレハイマン家が没落してから自立して裏世界に関与するようになっていた。現在の家長のゴッドローフ三世は当時の当主ゴッドローフ・バルカウの直系の孫というが、その素顔を知る世人はいない。

 バルカウはクラレンスと同盟を結んでいたが、それにより崩れた勢力バランスはフォンベルダーのバルカウへの奇襲を呼ぶこととなった。バルカウは重要拠点のいくつかを失い、フォンベルダーは市街地での戦闘で住民の支持を失ったが、フォンベルダーの勢力は盛り返した。クラレンスはバルカウに援軍を送らず、限界まで戦ったフォンベルダーは損耗も激しいもののバルカウの資産の四分の一を奪う。その戦闘では戦い慣れしている傭兵がほとんど生き残って評価を高めたが、傭兵隊長は元帝国騎士のジェノンと名乗る男だった。

 フォンベルダーが制圧した施設には人身売買の拠点もあった。バルカウの非人道行為を大義名分としようとするフォンベルダーの思惑は情報の開示となり、帝国の「救援部隊《レトゥンスマンシャフト》」が女帝アーデルハイドと目する「貴婦人《レディ》」と呼ばれる女性を保護することにもつながった。しかし彼女はクーロンでピースキーパーに保護されてからのことしか覚えておらず、自分がアーデルハイドに似ているとしてもそういう人物は他にもいるといい、混乱を呼ばないようにこのまま解放された奴隷達と暮らした方がいいと考えていた。

 一方、ブリュンヒルトの行方を追っていた者はここではその手がかりを掴むことが出来なかった。発見したのは「貴婦人」に移植されようとしていた「記憶の型」の収められた装置であったが、それが誰のものかはわからない。一部騎士はそれがアーデルハイドの記憶ではないかと考えたが、別人のものであった場合には残ってるかもしれない記憶を上書きして消す可能性もあり、再生は見送られている。帝国騎士達の知識にはヤマザキ博士の残した記憶再生技術の情報はなかった為、途方に暮れていた。

 クレランスとバルカウに占拠された秘密惑星ギデオンFにもその動きは伝わり、フォンベルダーの残党も盛り返しを計っていた。だが、ここでは名家に匹敵する勢力であるサイバー集団に影響力を持つ脳医学者ワカサが自由世界から逃げ出し帝国へ渡ろうとしており、フォンベルダーの反抗は大きなものとはならなかった。ワカサは知人のヴァルターを頼ろうとしていた。

 一方サイバー組織は象徴的指導者ブリュンヒルトを失い、組織を束ねるものを必要としていた。サイバーの理想郷を非サイバーに認めさせるにはそれなりの名目が必要となるが、「サイバーは宇宙に適応した人類」というミヤマ博士の子であるブリュンヒルトの代りになるのは一人しかいないと思われていた。

 脱出を望むワカサをのせた船はクレランスの幹部に発見され、ワカサの持つ情報を帝国への道中の保証として提供することになる。その為の交渉で二隻の宇宙船がランデブーしたのは、スター・ランチャーの大爆発で荒廃した惑星ナルAの上空だった。それを知らなかったワカサは目的だったハイライズ・エレクトロニクス社との接触が出来ないのを残念がったが、中枢が巨大宇宙船に移されたという噂には憧れを隠さず、会話で移動する鯨型宇宙船という理想を語った。

 ワカサから受け取った情報に、相手の望む「貴婦人」の洗脳記録はなかった。ワカサのいうには、浚われた全ての人間をフォンベルダーが預かったわけではないし、記録されていないのならフォンベルダーで処置したことはないのだろうということだ。そして、ヴィルターが帝国からの亡命を望んでいて、スター・ランチャーの研究も中止したらしいということを知らされる。結局、ワカサは帝星ライヒスグラッドバッハの皇党派への紹介の代りに「織姫」だという人物の記憶回復に協力するのを約束することになった。ワカサは彼をここまで運んだ人物にイスカリア星系の遺跡から発見されたという小匣を渡したが、それは妙に冷たさを感じさせた。

 フォンベルダーの幹部となった一人は、抗争で離散しつつあった科学者や技術者を呼んでいた。サイバーである彼女の示した目標は人造人間の研究開発だった。それを何に利用するのかは彼女自身もつかめていないが、来月には試作品第一号も完成する予定になっている。

 帝星にて、イェルゼキル人の居住区で援助を受けていたヴィルターに接触したものもいる。開発に関わったギガント・ランチャーが「大量殺戮兵器」となってしまったので迫害を受けているというヴィルターは今は遺伝子研究をしているが、「記憶を回復する技術」は彼の専門外だった。「ヴォードイー、フォロネ、ワカサ、ジェノン」という協力出来そうな知人の名前も挙げたが、今の居場所はわからないようだ。

 フォンベルダーの幹部の一人は、本家から別の幹部の暗殺を命じられていた。独断専行が目に余るという標的は、暗殺を命じられた幹部から見れば失うのは得策ではない重要人物だった。

 クラレンスの現当主とバルカウの幹部は、「バルカウの人質となったエルフィーナが『事故』にあったためにクラレンスはバルカウに援軍を送るわけにいかなかった」ということでこの件をまとめ、抗争による混乱が帝国や連邦の介入を招くのを防ごうとしていた。

 「教団」ではクラレンスの力を借りて教会を築き人々の支持を集めだした一派と、それを裏切りとするイェルゼキルに近い一派ができ、どちらにも支持を表明しない創設者はわずかな支持者を残すのみとなっていた。その彼女に会いたいと表明したのは、噂を聞きつけた「貴婦人」であった。

 自ら記憶を消した「織姫」であるという人物の現在の人格は、それでも記憶を求めていた。だが、調べれば調べるほど記憶を取り戻すのは不可能と思えてくる。悩み苦しむ彼女に「自分の家に入る『鍵』は自分で見つけるしかない」といったのは、傭兵のジェノンと名乗る男だった。


今回の登場シーン:抜粋

 首を傾げるイルに真実を教えたのは、帝国諜報員たるナンソーブである。
「彼処に見えるのは忠節の騎士ゼーランですね。彼等は女帝陛下を救援しに来られたのでしょう。貴婦人の存在は、僕やその他の人間から本国に伝えられていましたから」
「やはり、貴婦人こそは帝国のやんごとなき御方であると?」

〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜

 クラレンス家は勿論、フォンヴェルダー家が帝国に敵対する道を選ぶとはナンソーブには思えなかった。元より、貴婦人の解放は、それぞれの名家に対する帝国の心証を良くするであろうと説いたのはナンソーブ自身である。
 果たして、貴婦人は屋敷の直中に居た。身寄りのない多くの奴隷とともに暮らしていた貴婦人は、困窮の中でもその気高さを失わず、燦然たる光輝を双眸に宿していた。襤褸を身に纏ってはいたが、その容貌は確かに神聖銀河帝国女帝アーデルハイドのものであった。
 しかし、拝跪して帝星への帰還を願い出る騎士達に貴婦人は首を横に振った。
「私はアーデルハイドという方のことは何も知りません」


 他の方のアクションとの関係でかなり簡単に接触出来ました。一応リア中ではアーデルハイドと断定されていませんが、ほぼ確定情報と見ていいようです。

2002,02,20
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第10回A3
歌劇「驍将オリヴィエ」第三幕
担当:緋村縺マスター

 クーロンの3大名家の抗争は激化していたが、他の名家のほとんどはそのうちに沈静化するだろうとの考え方だった。だが、3大名家の新当主や新興幹部は自らがつぶれるのも厭わない行動にでる。そしてとうとうバルカウは事実上滅亡し、跡を制したものはクラレンス配下と認識されることになる。

 残るフォンヴェルダー家の幹部は苦しい戦況の中で進退窮まるが、「奴隷屋敷」で帝国精鋭のレトゥンスマンシャフトに護られた、女帝アーデルハイドである可能性の高い「貴婦人(レディ)」から騎士道を説かれ、「名家の壊滅」が目的というクラレンス当主への口利きもあり命拾いをする。

 フォンヴェルダー家の当主はクーロンから姿を消した。もともとフォンヴェルダーは外部のものであり、クーロンに強いこだわりはなかったらしい。外部から来たものに当主が叱責されていたという話もある。ただしフォンベルダーのシステムはまだ生きている。

 その中には記憶再生技術を研究していたものも含まれており、さらには失踪前に資金を残していったのも事実である。記憶再生技術が有用であると思っていたのかも知れない。

 傭兵のジェノンはバルカウの壊滅以来姿を消した。彼は帝国の科学卿フェルモッサの弟子だったという。イェルゼキルの情報網で調べると、帝国のライ家の養子であったらしい。

 かつて「織姫」と呼ばれた記憶操作のエキスパートであったらしい人物は、その力で自らの記憶を封印、別人として生きていた。その彼女が「貴婦人」の記憶を取り戻そうとしたとき、「織姫」自身の記憶も戻り、アーデルハイドは覚醒した。

 イェルゼキルと接触したものは、彼らの浮遊惑星が遭難したアーデルハイドを救助し、摂政のシュバルツの目から遠ざけるために自由世界へと送り届けていたという事実を知る。だが詳しい情報を与えていなかったためかバルカウは彼女を虐待、洗脳の対象ともなる。中立を維持したいイェルゼキルは手を回して勢力争いを誘導したのではないか、と想像されたが状況以外に裏付けはない。

 新たにギデオンFでサイバーの代表になった者は、今までの路線を転換して非サイバーとの共存を求めていた。だが、サイバーを一般人と同じに扱うと一般人はサイバーの能力に対し「劣った」存在になってしまうとも言える。悩むリーダーの元に届けられたのは、人を改造したのではなく一から作られた人造人間の少女であった。出来合いの記憶を植え付けられたその存在に、人とサイバーの違いは何であるかと再び悩みは深まる。

 アーデルハイドは帝国有力貴族ラインフェルデン家から示唆を受けて、自由世界から出発することになった。新たに影武者となった少女を連れたアーデルハイドは、「教団」の代表者も一緒に来て欲しいと誘った。アルカトラスを経由し、イーヴルの星オリュンポスに向かうつもりだという。

 それと相前後して、「血塗れの妖精」と呼ばれるレインフォーラ人の生き残りであるクリムヒルトが自由世界にやってきた。生体艦ラ・ツォレルーンに乗った彼女は人造人間の開発者、「織姫」、もっとも優秀なサイバー技術者との会見を望んでいる。


今月の登場シーン:抜粋

 傍らのナンソーブ・エクライプは、貴婦人の所作に眼を遣った。
《やはり、彼女は帝国の上流階級の人間ですね。マナーが明らかに帝国流です》
 帝国の諜報員であるナンソーブは、無論、帝国の流儀を熟知している。
《それに、あの容貌。以前に話を聞いた時は、髪も乱れ、顔も汚れていましたが、確かに女帝陛下に似ています》
 もっとも、諜報員に過ぎないナンソーブが女帝の素顔をこのような間近で見つめたことなどない。
 無論、写真程度は見たことがあったが、少し目鼻立ちの似通った女性が女帝と同じ化粧をしていれば、見分けがつかなかった。実際、女帝として一種のカリスマであったアーデルハイドの装いは、一部の若い女性の間で流行していたことをナンソーブは知っていた。


 プレイヤーとしてはもう少しアーデルハイドの記憶を取り戻すのを引っ張るかと思いましたが、思ったよりも早かったです。あとは勢力の再編があわただしくてつかみ切れません(^_^;)。

2002,03,21
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第11回A3
歌劇「君子フロリマール」第三幕
担当:緋村縺マスター

 惑星クーロンでの「名家」たちの長年に渡る支配は、ライバルのバルカウ家、フォンヴェルダー家を追い落としたクラレンス家が最大勢力となった。だが、若き当主はあえてこの時期、クラレンスの解散を宣言する。そして新たに「クーロン・ルネサンス」を組織し、名家だけでない、クーロンのための活動をはじめようとしていた。

 一方で、追い落とされたフォンヴェルダー家の有力者だった者が勢力を盛り返そうと動き出しているという。調べた情報では、かつてフォンベルダーの傭兵だったジェノンは鉄騎団《アイザーン・ナイツ》という組織に所属していたともいう。もともと外部から来たというフォンヴェルダーは、今も様子をうかがっているのかもしれない。ただ、クーロンで残った弱小名家をまとめるのは難しいようだ。

 イーヴル=アストロニック・ホモ・サピエンスの故郷のオリュンポス星系に至った騎士たちは、そこでアストロニックと同化したものが光の渦となり、周囲を巻き込む大爆発をおこすのと遭遇した。その爆発の中、騎士たちは人類の歴史を一瞬に体験し、魂が融合するのを感じていた。第3の覚醒「シンクロニシティー」の発動であった。

 自由世界に滞在するレインフォーラ人クリムヒルトの願いは、レインフォーラの復活だった。そのためにゼロから人造人間を作りだす技術、記憶操作技術の存在するクーロンに来たのだ。素材となるべきレインフォーラの女性はクリムヒルト自身で男性は生体艦ラ・ツォレルーンであるという。また、「自由世界」でならレインフォーラ文明を許容する余地があるのではないかという理由もあった。

 オリュンポスの爆発は、やがて破壊の力を持たない光として星系に広がっていった。そこでは人々は互いに感覚を共有し、他人の苦しみを直接体験することもできた。

 アーデルハイドは滅び行くイーヴル=アストロニック・ホモ・サピエンスとの共存を望んでいたが、シンクロニシティによって分かり合えると楽観視しているわけでもない。人間同士でも争いが続いていたのである。

 そしてアーデルハイドはアストロニックの騎士ジョルファインと洞窟で邂逅し、一夜を共にすることになる。

 また、サイバー集団は「伝説のサイバー」と呼ばれた非サイバー、ブリュンヒルトの情報をつかんでいた。記憶を奪われたはずの彼女だったが、人造人間の少女エマは彼女のいうことがわかるということだった。


今月の登場シーン:抜粋

 琥珀色の液体が入った硝子杯を傾けるトウジ。傍らに座る帝国諜報員ナンソーブ・エクライプは、酒肴の盛られた白い陶器を爪で弾いた。
「戦いはこれからですよ、トウジさん。半世紀に及ぶ歴史を持つ名家です。三大名家の消滅を機に、野心を抱く中小の名家もありましょう」
 ナンソーブの危倶は、事実を的確に反映していた。それが分かるだけに、トウジは危うさを感じざるを得ない。
「漁夫の利が欲しいのか。帝国は」
「とんでもありません。ただ、女帝陛下が滞在された奴隷屋敷の存続をクーロン・ルネサンスに依頼したいだけです。苦難に耐えた女帝陛下を讃え、同様に不幸な女性の救済機関としてね」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ナンソーブは懐中から紙片を取り出す。其処には、かつてフォンヴエルグ一家に味方したジェノンなる傭兵が、一時的に鉄騎団《アイザーン・ナイツ》という名の組織に加入していたことが判明したと記されていた。
「どういうことだ」
 訊ねるトウジに、ナンソーブは首を横に振る。
「さて、ね。フォンヴェルダー家はクーロンの土着の名家ではなく、外部から到来したという話は御承知かと思います。大きくはない、そして支配的でもありませんが、何かが動いていることは間違いなさそうです」
「クーロン・ルネサンスにとって、敵か味方か」
 厳しい表情で質すトウジ。
 ナンソープは軽く嘆息すると、再び白い陶器を爪で弾いた。心地良い高音が耳果を打つ。
「巡り合わせ次第でありましょう。クーロン・ルネサンスという器は、彼等の眼には名品と映るようです。彼等が密やかな行動を続けている理由を考える必要があります。あなたも、そして僕もね」


 なんというか、いきなり全人類がニュータイプになってしまった感じといいますか。情報が商売のネタである諜報員にはやりにくい時代が来るのかも。

2002,05,08
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第12回A1
歌劇「銀河大帝の聖騎士」終幕
担当:緋村縺マスター

 人類とイーヴル=アストロニックの出会いは、アストロニックを壊滅させ人類に「シンクロニシティ《共時性》」という革新をもたらした。不幸な結末となった出会いは、人々に教訓を残した。

 人類の可能性の一つであったアストロニックを調査するのは人類のためになるはずと、地位をなげうってゼウスの遺跡を調査しようという者達もいた。それは自力での帰還を不可能にする選択だったが、新たにここを移民計画の対象にするために奔走したものもいる。散開したアストロニックの生き残りとの共存共栄の地を目指す人々もいる。

 また、自らの乗機であるキャヴァリアーとの意思の疎通が可能となり、語り合う騎士もいた。

 アルカトラス移民艦隊はその役目を果たし、星系に帰還した。女帝アーデルハイドは関わった者達に勲章を贈りねぎらい、人々はアルカトラス星系を発展させるための活動をはじめていた。大量破壊兵器として使われた「G」やキャヴァリアーの平和利用を計画している者達もいる。

 銀河連邦でも改革が始まっていた。混乱する政情の中、力を持つ軍の影響は大きい。中立であろうとする軍部ではあるが、その動向は注目されるものだった。そしてアルカトラス星系での出来事を経験した兵たちは人の革新を感じていた。

 テーベ・リュカオーン帝国では、今はある程度の地位を固めていた。戦火を逃れて来るであろう人々を受け入れることは優秀な人材を受け入れることにもなるだろう。神聖銀河帝国の女帝アーデルハイドも難民受け入れには了解している。

 神聖銀河帝国では、アーデルハイドが産気づいたとして大騒ぎになっていた。女帝自身はそれを秘密にすることなく、おそらく1ヵ月前に邂逅したアストロニックの子であろうと告げた。モダーンとアストロニックの混血であること、それが1ヵ月足らずで出産に至ることなどは人々を驚かせた。そして人類の革新を期待される皇子が生まれ、父ジョルファインの名からジョアンと名付けられた。そして帝星に帰還した女帝は人々から歓喜の声で迎えられた。

 自由世界ではレインフォーラ人のクリムヒルトが出産を控えていた。それはレインフォーラ人再生の第一歩として捉えられている。そしてレインフォーラ人再生に意味を見出す者達はクリムヒルトに協力して活動していた。

 名家による支配体制が崩壊したクーロンでは、自ら解体したクラレンス家・バルカウ家の元当主たちが率いる「クーロン・ルネサンス」が人々に受け入れられていた。一方では旧体制を望むものの反抗も残っているが、民衆は彼らを新時代の支配者にしたがっている。だが、彼らは改革の方向を見ると姿を消していった。

 サイバー達も新指導者を迎え、融和路線をすすめていた。救助された「伝説のサイバー」ブリュンヒルトは記憶を奪われたはずであったのだが、シンクロニシティにより意思の疎通も可能となっている。その記憶操作技術を持っていたものは自らそれを封印し、それがこの時代に力となると思っていたものは惜しく思いつつも、敵対勢力に渡らないのを安堵した。そして女帝アーデルハイドは自由世界へお忍びで訪れることを望むメッセージを送っていた。

 生体母艦ラ・エッツェリアス、通称白鯨はレインフォーラの作ったものでありながら、人類=モダーンとの接触で影響を受け、クリムヒルトと道を違えることになった。そして今は新天地をめざし、それを望むものと共に未踏宇宙探索の旅に出ることになった。

 イェルゼキルには「G」の量産計画も持ち上がっていた。それは資金と時間さえあるならば可能な計画ではあったが、歓迎される声は聞こえなかった。

 もう一人の「黒騎士」カルレッティアは、黒騎士エルハルトを尋ねてきた者に対応し、エッシェンハイマー家復興のためにもエルハルトに逢わせることも、所在を教えることも出来ないと告げた。


今月の登場シーン:抜粋

 カナトは、レインフォーラ復活のために自分などの力は必要ないとクリムヒルトに告げていた。レインフォーラ人の記憶は、クリムヒルト自身が子供達に伝えていくべきだと信じたからである。自分は、何時までも探偵ケイスケ・オザキの助手なのだ。ナンソーブは自らの能力を封じようとするカナトを口惜しく思う。
「第三の覚醒が現実となった今、記憶そのものを操作するあなたの技術は注目を浴びるでしょう。適うことなら、その技術を我等が帝国に用いて欲しかったのですが」
 そう云って嘆息しながらも、他の勢力に取り込まれなかったことを安堵するナンソーブであった。
 船内の時計に眼をやるナンソーブ。定められた時刻が到来したことを知ったナンソーブは、皇帝印によって封をされた書簡を大儀そうに取り出した。
「実は、女帝陛下から伝言を預かっているのです。表書きには自由世界で世話になった方々へ、と綴られています」
 −−自由世界で過ごした日々は、私にとって貴重な体験でありました。皆様方のことは、決して忘れません。何時になるかは分かりませんが、きっと自由世界に遊びに赴くつもりです。ライヒスグラッドバッハには、ミルヒを置いていけば良いのですから。


 ゲーム中で人類の革新、シンクロニシティが現実となった今では「情報が共有されている」ということで、Aブランチの1〜3がまとめてのリアです。要約やる立場からはとっても大変(^_^;)。今までの積み重ねがないと何が大事か判断しにくいからなぁ。

2002,06,13
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