エターナル・ギルティ〜君に会うために:リアクション要約

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初期情報E
担当:鮎川久璃子マスター

 新宿の繁華街を抜けた場所に位置するのは、怪異が起こると評判の雫の宮学院高校だった。ここでは最近、流れた噂が真実となり、そして消えていく。最新の噂は、言葉を話さない女子学生に関する「横田朝香の声は呪われていて」という、中途半端なもの。それでもその女生徒を苦しめるには充分だった。


 実は第一候補の条件に「今まで担当してもらってないマスター」というのを入れて選びました。あとの理由は、学園ものっぽくできるかなという雰囲気で。

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第1回E
渇望
担当:鮎川久璃子マスター

 東京は新宿の私立・雫の宮学園高校では、学校の「ありがちな噂」が次々と現実化している。その中には人の死もあったが、結局のところ噂は噂として忘れられていく。

 そしてまた「洋式トイレのフタにスーツの裾を噛まれる」という事件が起きる。その被害にあったのは学校の教師だった。それを助けようとした生徒が手を触れた時、彼らは前世を思い出す。同じように、何かのきっかけで触れ合った者が前世での因縁を思い出すことが増えていた。

 そして、今の話題は「毎日一人が行方不明になる」事件であった。普段通りに家を出て、学校にこないので発覚するこの事件は新聞でも連続誘拐としてとり上げられている。

 前世を思い出した者の中には、どこからか声を聞いた者もいる。どこかで聞いたことのあるその声は「現実こそが夢。あの時を再び。」「龍脈を、解放せよ。」と言っていた。

 誘拐事件に対し、自分たちを囮にして手掛かりを探ろうという者もいた。何かの力を感じるつむじ風に巻かれながらも攫われることのなかった者の前にそびえているのは、情報系企業も多数入居している産業情報ビル「スカーレット・タワー」。そこのテナントとして「前世占い」の有るゲームセンターや飲食店、雑貨屋などがあるために学生の入り浸る場所となっていた。

 週末が終わり、月曜になると再び行方不明者がでる。そして、広まっている「横田朝香の声は呪われていて」という噂の本人である女生徒、普段は筆談でコミュニケーションをとっている横田朝香もふとしたきっかけで前世を思い出し、思わず相手の前世の名前を呼ぶ。その声を聞いた生徒たちは次々に倒れ、その様子に衝撃を受けた朝香も気を失った。夢の中、浅香は母に声を出すことを強く止められていたのを思い出していた。

 それから数日経った授業中、人々の3割ほど…「転生者」のみが激しい揺れを体感した。朝香の声を聞いた者は、その後時折ほんの1秒ほど姿を消すのが目撃されている。朝香は屋上で涙を流し、前せいで因縁があったらしくやたらに突っかかる井上尚もそれを影から見つめる。そして、スカーレットタワーの最上階から、あるいはどことも知れぬ場所からそれを見つめる者がいた。どことも知れぬ場所にいるのは転生者達によるムーとアトランティスの覚醒を望むチャーチワードだった。

 そしてまた、便器に食べられそうになり、さらに流されそうになっている生徒を助けようという騒ぎも起こった。


今月の登場シーン:抜粋

 くうくう、と午後の教室で寝息を立てている野仲抽芽(のなか・ゆめ)。とても幸せそうで、起こすのは忍びないが、
(おーい。……授業中なんだよー)
 稲垣響夜(いながき・きょうや)は何度も柚芽をつついて起こしてやろうと思った。けれど柚芽の罪のない寝顔に負けてしまう。
 教卓では有栖川総一朗(ありすがわ・そういちろう)が、響夜に柚芽を起こすようサインを送っている。口でも言っている。響夜は後天的な事情で耳が聞こえない。もっとも響夜は唇が読めるのだが。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 そうヴァルシスは言い放ち、加賀見を襲った。自分のものにした。その後、時間になって現れたサガは、言い得ぬ衝撃を受け、自失する加賀見を後ろにかばいヴァルシスに剣の切っ先を向ける。
「貴方を許すことは出来ません」
「おいおい、命を取ったわけでもなし。まあいい、その女を気に入ったんでな。男の方には死んでもらわないとな」
 ヴァルシスは魔獣召喚の魔法を使い、サガの命を奪った。うつろながらも一部始終を目の当たりにした加賀見は、気が触れたように笑い続けた。いつまでも、いつまでも。


 う〜ん、PC同士の関係をばっさり切ってるのに情報量多いですね。逆に言うなら、その関係から外れた部分は重要情報と見てもいいのかも。

 なお登録時の前世アクションは「婚約者だった(産まれた時からの許嫁)」でした。

2001,10,22
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第2回E
望郷
担当:鮎川久璃子マスター

 雫の宮学園高校の生徒たちが行方不明となる事件は続いている。「誘拐事件」とされているが、行方不明者には共通点は見えていない。行方不明になるのは「噂が真実になる」ことと関係があるのではないかと疑った者は自分自身が誘拐されるという噂を流そうとしていた。同じように、自分が呪われているかのような噂を流して人から遠ざかろうとするものもいた。思い出した前世を信じたくない教師は、一人での帰宅を戒めて、噂にもかかわらないようにと注意している。

 「横田朝香の声は呪われていて」という噂の主、横田朝香の声を聞いた生徒は、今のところ時折耳が聞こえなくなることがある。それでも彼女に関ろうとするものが筆談で聞き出したところによると、高校に入るまでは普通にしていたそうだ。彼女にやたらに突っかかる井上尚に対しても思い当たることはない。そして「途中までの噂を無害なように完成させる」ことで解決をはかろうと考えるものもいた。

 朝香の前世ファナに関る記憶を思い出したものがいる。それによると、ファナは太由斗に想いを寄せ、単身ムーに乗り込もうとした彼の飛空挺を壊し、そのため神官の呉葉の怒りを買っていたらしい。

 井上尚と話したものは、彼が朝香に突っかかるのは前世での行いが許せないからだということを確認する。それが現世とは関係ないと理解しつつも、感情ではどうしようもないほどらしい。前世が呉葉である彼は、飛空挺の整備不良で出撃できなかった太由斗とファナを処罰することになったが、太由斗は呉葉の親友であったのだ。

 「スカーレット・タワー」で目撃されたチャーチワードと名乗る人物に会おうと、タワーを訪れるもの達がいた。それとは別にタワーのゲームセンターで「前世占い」のゲームを体験していたものは、力を吸い取られるように感じていた。そこにやってきた尚は「ここは叔父のビル」であり、最上階に住んでいるのだといった。

 チャーチワードに会ったものは「現世が夢」というのを証明するのは龍脈を解放することに繋がり、アトランティスとムーが再びこの世に現れることにもなるのだという。その時今の世界がどうなるかは「神のみぞ知る」ということだ。

 誘拐事件を調べているものは有効な情報を手に入れられない。もっとも、身代金等の要求もなく、生徒の危機意識が強くなっているのにくり返されることから、それが単なる「誘拐」ではないのだとも考えられている。共通点も目立った点はないが「目立つ点のない流されやすい生徒」というのが共通点ともいえた。

 自分たちが囮となって誘拐事件の手掛かりを掴もうとしたものは、人を飲み込もうとするつむじ風の中から異世界から呼ぶ声が聞こえてくるのに気がついた。つむじ風は召喚したヤタガラスを飲み込んで消えて行った。

 竜脈が学園にあるのではないかと調査していたものは、学園が移転したことがあるのを知る。最初に学園が立てられたのは、今のスカーレット・タワーがある場所だということだ。また、行方不明の生徒たちは「眠っているが無事」で竜脈を解放するために集められているのだというのもなぜだか感じられた。

 わざと流した噂は、噂になるまでもなく消えて行ったようだ。一方で危険度の高い噂は一回限りで消えている。誰かが意図的に流し、消しているようでもあった。もしかしたら龍脈の力が関係しているのかもしれない。

 尚は叔父の小此木宗一に「太由斗の生まれ変わり」を見つけたと言っていた。だが「またファナに殺されるかもしれない」という思いは、自分が殺してしまおうという気持ちも生みつつある。

 「小さな石を2つ積んだ『緋の道祖』が湖に向かう道の傍らにおいてあった」という記憶を誰モガ思い出した頃、誘拐事件は止んだ。だが、生徒は戻ってこない。


今月の登場シーン:抜粋

「おはよー」
 と元気に教室に入ってくるのは、何故か他校生(中学生)の水木瑠璃(みずき・るり)だ。野仲柚芽(のなか・ゆめ)をめざとく見つけると、走り寄ってくっついた。
「ユメさん、今日行くんだよなっ。『スカーレット・タワー』」
「うん」
「やったー!デートだー。手持ちの金あるだけみんな持ってきたんだー。実はタワーでいいバイト見つけて頑張ってたんだぜ。金貯めたし」
 瑠璃は柚芽が大好きだった。一目惚れだった。しかし抽芽はつっこみ属性、そして瑠璃はかまわれちゃんだった。柚芽は言った。
「よし。じゃあ、今日はみんなで瑠璃さんにたかりましょう!」
「えっ、えっ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 抽芽の前世の姿、玄武の加賀見(かがみ)。加賀見はよいガラスのゴブレットを見つけたばかりで、それをとても大切に扱っていた。そのゴブレットとは、祭器のラピス(−)。瑠璃の前身だ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「カガミ様あ……どうか御心を落ち着けてはもらえませんか。もう幾日も何も召し上がってないし、これでは体が」
「祭器ごときに、我の何が解るというのだ! 知ったようなことを言うな! どこへでも消えてしまえ!」
 言ってから加賀見は口元を押さえたが、その時はもう遅かった。ラピスの心に小さなひびが入り、音を立てて割れてしまった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「……なにこれ」
 見ていた瑠璃が怪訝な表情を浮かべ呟いた。しかし、柚芽は瑠璃を振り返りもせず、淡々と項目に解答してゆくのだ。
「……ユメさん?」
『あなたの忌むベきものは?』
「やめよう! なんか変だってこれ!」
 瑠璃が柚芽の肩を強く揺さぶる。
「……あ」
 ようやく正気に返った柚芽が頭を振った。何か、強迫観念のようなものが生まれて、とにかく答えなければいけない気持ちになっていた。思考が曖昧になる。……自分が自分でなくなる感じ。例えば前世の自分の存在が、現世を上回ってしまうかのような。
 いや。そうなのだ。……消耗した。エネルギーを吸い取られた感じがした。


 相変わらずの情報量の多さはさすがにHGというところですか。しかも前世が混じってくるから大変です。要約作業をしてなんとか大雑把な流れをつかめたかというくらい。

2001,11,24
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第3回E
呪縛
担当:藤崎ゆうマスター

 以前雫の宮学園のあった場所には龍脈があるといい、現在はスカーレットタワーが建っている。その理由が現在の学園の場所に更に強力な力があるのではと考えているものもいた。

 学園では噂が真実になるということがあるが、その噂を何者かがコントロールしている様子だった。また、失踪事件の鍵が学園にあると考えたものもいて、学園を訪れたりもしている。

 声が呪われているという噂の主である横田朝香は、彼女を気づかう者の優しさに触れた故に、一人でいたときよりも更に一人になることを恐れていた。そして彼女の前世であるファナの想い人であった太由斗の生まれ変わりと会わせることこそが、彼女の為になると考える者もいる。

 噂を現実化させているのは、前世の因縁から朝香に恨みを持つ井上尚ではないかと、直接本人に疑問をぶつける者もいる。それに対してはどうともとれない答えをするが、何をしたいかには呪いに誰も巻き込みたくないという回答をする。尚の前世の呉葉は最後に残った友人であった太由斗に非常な思いを持っていたらしい。

 誘導尋問にかかり、自分が噂をコントロールしていたのを明かしてしまう尚。その直後、尚は体を折って苦しみ出す。そこに居合わせた者達は、ふれあうまでもなく前世の記憶を共有した。

 ファナはある者によって顔を傷つけられ、それがためらっていた行動を実行に移させることになる。太由斗を手に入れるために罪を犯したファナの歌は呪いの歌となり、呉葉はファナの声を奪う。

 それを思い出した朝香は悲鳴を上げ、耳にした者は激しい痛みにおそわれる。尚はそれに対処する方法を教え、前世を思い出したり力を使うと龍脈が活性化し、解放されれば呪いが解かれるという。

 前世の呉葉は、太由斗の計画が成功すれば戦争が終わっていたかもしれないとファナに対する厳しい処分を決定していた。それに抗議した者は牢に入れられたりもした。また太由斗はムーの手の者によって暗殺されたが、ある者により「運命を入れ替え」他の者として生きることになったらしい。その者の名は、呉葉という。それを思い出した尚は、自分が誰であるのか混乱に陥っていた。

 スカーレット・タワーのオーナーで尚の叔父、小此木宗一に接触しようとした者も多いが、不用意な接触は利益にならないと必死に止めている者もいる。また、調査の結果タワーの地下に使われていない広い部屋があるのもわかっていた。

 警察官という身分を利用して宗一と接触した者は、彼が転生者ではないのに気がつく。タワーをここに建てたのは学園が移転して安く土地を手に入れたからだし、実は東宮院家から「風水とかの龍脈があるから」で頼まれたのだともいう。そしてチャーチワードは東宮院の使いの者だと。

 タワーの「過去」を見た者は、かつてラファイエット家がここよりも更に龍脈の力の露出の多い場所を見つけ、学校を移転したが、東宮院家が「火の道祖」に見立てて建てたスカーレットタワーによって流れを押さえ込んだのだと知る。そして噂が現実化するのは楔が抜けかけているからか、あるいはその逆か。ともかく押さえがなくなれば流れ込んだ力は雫の宮の龍脈を解放するだろう。

 タワーの地下を調べていた者は、そこで行方不明の生徒たちを見つける。だがそこには不可視の障壁があり、手を出せない。更には宗一にも見つかってしまうが、彼にはその生徒たちは見えていないようだった。

 前世で、緋の道祖のことを知った者がそれを手に入れようとしたり、血で汚したりした。その結果、龍脈は荒れ狂ったらしい。

 尚は未だ混乱冷めやらぬ様子で街を彷徨っていた。酔っぱらい、つぶれかけた尚に「新宿は混沌の街になる」と暗示をかけた者がおり、やがてそれは噂となって流れていた。

 チャーチワードは龍脈について語っていた。「緋の道祖」に力を注ぎ込めば龍脈は解放される。龍脈の中心を破壊すれば封じられるが、力の逆流でタワーも破壊される、と。


今月の登場シーン:抜粋

「龍脈について調べているんだが……」
 天官昂(あまみや・すばる)と野仲抽芽(のなか・ゆめ)に首を傾げられ、大神吼司郎(いぬがみ・こうしろう)は苦笑した。
 去年までは、この雫の宮学園の生徒だった吼司郎はこの学園について調べるため、図書館にやって来ていた。
「元々、雫の宮学園はスカーレットタワーのある場所にあった。何故、移動したのか?スカーレットタワーの場所に龍脈があるのならなおの事、転生者が集う学園がそこにあった方がいいだろ?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 長い艶やかな黒髪を揺らし、加賀見は大気の精霊のエレクトラに会いに行った。
「どう思いますか?」
 エレクトラからの相談は、恋人であるフェンリルの事だった。エレクトラは疑っていた。フェンリルと、涼(すず)……龍同士である二人の間を。
「心配する事はない。貴公らは恋人同士、なら、彼を……絆を信じればいいだけの事である」


 相変わらずの情報錯綜で、要約してやっと流れがつかめるというところです。前世と現世が入り交じっていますからね。

2001,12,24
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第4回E
交錯
担当:藤崎ゆうマスター

 転生しても繰り返す、横田朝香の前世のファナの呪いとは、悲しみのほとばしりが伝わってきているのではないかと思うものもいた。それを断ち切ろうとする井上尚に、龍脈を解放することが呪いを解く方法だと教えたのはチャーチワードだという。噂を操るのも、チャーチワードが「出来る」というので、やってみたら出来た、ということらしい。だが、きっかけは何であれ行動するのを決めたのは尚自身であるという。

 朝香に対して、彼女の未来を「預言」することで手がかりを掴もうというものもいた。無言のままに承諾した朝香の未来は、誰かわからないが知っている人物を見つけ、泣きながら歌っている姿だった。おそらく遠くないうちに、朝香は太由斗と出会うのだろう。

 前世よりも現世を大切に思う者達は、龍脈を解放するのも封印するのもリスクがあると考えていた。その為には「緋の道祖」を使って制御するのが有効と思われ、前世の記憶からも情報を得て行動を始めていた。

 ファナが「呪いの歌」を歌っていたのに反発し、朝香に「言霊支配」を使って強引に事情を聞こうとした者もいる。朝香自身は「呪ってなんかいない、ただ会いたくてあの歌を」ということを話したが、その声を聞いた者は体の不調を覚えることになる。そして朝香は、尚が太由斗の転生だと「思い出し」、会って話をするつもりになった。

 前世に引かれ、そのころに戻りたいと思う者もいる。一方で尚に「朝香の呪いを解く噂を流す」ことを頼んだ者は、既に噂の操作は尚の制御下にないことを知らされる。また、話の中で尚以外のものが「太由斗の記憶」らしい者を見たことがあると告げ、状況は混乱した。

 チャーチワードに直接会い、行方不明者が閉じこめられている結界の解除を願った者は、既に結界は「前世占い」の機械によって強化され、作った本人であるチャーチワードにも解除不能になっていると知らされた。破るには破壊するしかない。

 その結界のある「スカーレット・タワー」の地下では、ともかく行方不明者を助けるために結界を破ろうとする者達と、少なくとも状況がはっきりするまでは手出しするべきではないという者達とが小競り合いを繰り返していた。それはやがて臨界を超え、大きな力のぶつかり合いとなる。前世の記憶…チャーチワードのいう「現実」を受け入れた者達も龍脈を解放するべく行動を始め、争いは広がっていく。

 時期を待っての破壊より、現段階での破壊の方がリスクが少ないと考える者もいて、結界は破られてタワーは崩壊する。行方不明だった者達も救出され、崩壊の際に負傷した尚の叔父、宗一も一緒に病院へ運ばれる。だが、解放されるかと思われた龍脈の流れは次第に収まっていく。

 雫の宮学園では、流れてきた龍脈の力に触れ、完全に前世に覚醒した者達がいた。その姿はもう「現世」に生きる者達には知覚出来ない。やがて地震が収まったとき、大きな被害を受けた新宿は別世界のようだった。そして学園では、朝香が校舎の鐘の下に吊り下げられていた。

 前世のファナは、今の世で再び太由斗と会うことが叶わぬとして来世に望みを託し、自分だけのための歌を歌っていた。それは協力する者によって増幅され、進められていた転生計画にも影響を及ぼす。また、チャーチワードの進めていた龍脈の封印は妨害により失敗していた。そして、そもそもの発端であった太由斗の飛行船への破壊活動はファナによるものではなかったという事実も明らかとなる。いくつかの術とファナ、呉葉の死のタイミングが合ってしまったためにそれが歪み、結果として太由斗の魂は引き裂かれ、2人に分かれて同化することになってしまった。

 朝香もそれを「思い出して」いた。そして、ファナの愛した太由斗が元のままで転生することがないことも知り、絶望の歌を歌い出す。幾度転生を繰り返しても会えないその思いは、強い呪いとなっていた。

 チャーチワードは、転生の流れから外れてしまった魂だった。かつて、生れ出でる前に死ぬはずだった魂がそれを思う心に引き寄せられ、同居していた。そして引き寄せた方の魂が先に死んでしまい、チャーチワードは死ぬことがなくなった。チャーチワードはファナの周囲に結界を張り、行く手を阻む。そして彼には理が通用しないのだ。


今月の登場シーン:抜粋

「そうですぅ。『緋の道祖』が龍脈の流れを制御するというなら〜、上手く使えば学校に集まるはずの力をゆっくりに出来るんじゃないでしょうか?」
 野仲柚芽(のなか・ゆめ)は、スカーレットタワーと学校との間に、赤い小石を並べたり、赤いシールを標識の裏に貼ったりしていた。それは、『緋の道祖』に見立てる為。効果のはどは解らないが、何かせずにはいられなかったのだ。
 柚芽は、現在の生活が気に入っていた。授業中のんびり居眠りしたり、水木瑠璃(みずき・るり)と遊びに行ったり……そんな、他愛のない普通の……幸せな。
 だからこそ、破壊を防ぎたかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「夜光さんは僕を信頼してくれたのに、僕のせいで『緋の道祖』は盗まれて……」
「いや、お主のせいではない。俺が悪かった。もっと状況を説いて注意を促しておくべきだったのだ」
「二人とも、前世な感じに戻ってますう〜」
 柚芽の突っ込みに、日和と竜馬はハッと我に返る。
「あ……でも、ちょっと解ったわね。柚芽ちゃんが見立てた小石に、龍脈からの力を込めれば、一応『緋の道祖』みたいなものが出来る、って。とりあえず、そんな感じでやりながら、他にも情報を集めて……他に何か解ったら、また考えましょう」
「じゃあ、それはわたしが……」
 頷きつつ行動に移る三人娘、教師達はもはや止める事も出来ずに、見送る。彼らはここを離れるわけにはいかなかったから。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「貴公は意外と、こういう事は苦手なのだな」
「そうね……それは否定しないわ」
 女禍の(嘘の)葬儀に出席したり、エレハイムの相談に乗ったり……厳格さを漂わせる子供、な外見とは裏腹に、加賀見(かがみ)は世話焼きだった。
 見るに見かねて手を出され、アルサスティーンは苦笑をもらした。そんなある日だった。アルサスティーンが、襲われたのは。
「ちょっ、しっかりしなさいよっ!?」
「貴公が無事なら……それで、良い……」
 アルサスティーンを庇い、顔死の重傷を負った加賀見。
「誰か、誰かいないの?!」
 自分が助かった喜びよりも、このままでは加賀見が死んでしまう、その焦りが大きかった。
「どいていろ」
 サガはアルサスティーンを押しのけ、加賀見を癒した。
「無事でよかった」
 目を開いた加賀見に、二人はホッと安堵したのだった。


 相変わらずながら、前世が複合しているので内容が掴みにくいですね。これはマスターチェンジのためかもしれないけど、前世と現世の区別もだんだんつきにくくなってきているし。

2002,01,28
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第5回E
解放
担当:藤崎ゆうマスター

 龍脈を解放しようとする横田朝香のことに関わろうとする者達が、それぞれの覚悟と共に集結しはじめていた。2月14日ということでバレンタインに思いを託す者も多い。

 「緋の道祖」を使って龍脈を制御するのを望む者達は、詳しいやり方を把握しないままともかく作業を進めていた。そのために、あるいはそれを守る為に前世の力を使うのを厭わない者も多い。だが、それは「前世の自分」に近づいていくことでもある。もっともチャーチワードに近づく為には自分が「あちらの世界」に行くことが必要と感じて自ら望んで力を使う者もいる。そしてそれを妨害しようとする者もやはり存在していた。

 歌うことで龍脈の力を呼び込もうとしている朝香に、歌で対抗しようとしている者達もいた。それは朝香の歌を弱めたように感じる。

 チャーチワードをなんとかすることで龍脈を止めようとしている者達もいる。だが、チャーチワードは「私にどうこう出来るレベルは超えてしまっている」と答えた。

 前世を「思い出した」者は、龍脈を制御する「緋の道祖」が、もともとは人柱をして龍脈に溶けることで解放された龍脈を静める方法の代用であったのを知る。

 龍脈を解放したい者達は、尚の心を縛ることを考える。朝香の前世のファナが愛した太由斗の魂の片割れを持っているというのが尚だからである。そのために叔父である宗一を傷つけた者もいた。

 チャーチワードに関わる者の一人は、彼を「解放」する方法が「実体と精神体を同時に殺すこと」だと「思い出し」ていた。そしてムー大陸で滅んだはずの彼の実体は、龍脈に乗って雫の宮学園の地下で再び形をなし、現れてきた。そしてチャーチワードは倒れるが、それにより押さえられていた龍脈は暴走を開始する。

 朝香は皆の説得で自分を取り戻していた。だが朝香は大陸復活を望む者により命を奪われる。即死状態では「癒し」が効くこともなく朝香は死んだ。そして現世は滅んでいこうとしている。


今月の登場シーン:抜粋

「大人しく待ってて手遅れになるより、始めてしまって後で修正する方がいいでしょう。ともかく被害の多かった所が龍脈の上だったと仮定して、解ってる分の作業を進めましょう」
 野仲柚芽(のなか・ゆめ)は、集まった者たちを見回し、言った。破壊を防ぎたかった……何かしないではいられなくて。日和はその肩を、抱いた。
「柚芽ちゃん、小石を見立てて。それに、私……黒曜の龍脈に働きかける力を使って、龍脈の力を込めるわ。そして、『緋の道祖』を作るの」
 作る場所は、雫の宮学園に向かっている龍脈の流れの上に、作れるだけ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「こっ、これは……もしかして……?」
「バレンタインですし、瑠璃さんにチョコレートです」
 疲れた顔をしていた。それでも、ニコッと微笑んだ柚芽はとてもキレイで……瑠璃はポゥっとなった。
「嬉しい! すごい嬉しいよ、柚芽さん! ……でも、これ、チョコ? 何か、小さな感触がいっぱい……」
 「一生懸命集めたんですよ。チロルチョコ全種類詰め合わせです」
「チロルチョコ……」
 全種類なんてすごいや柚芽さん、少しトホホと肩を落とした瑠璃はそれでも、嬉しそうだった。


 前世との絡みが増えてきて、要約が難しくなっています。ともかく現在は龍脈の解放寸前というところ。まともに止めるのは難しそうなのですが。

2002,02,26
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  第6回E
終幕
担当:藤崎ゆうマスター

 人々が「前世」を過ごした大陸が龍脈の暴走でよみがえろうとしており、地上は地震に襲われていた。地上を、大切な「現在」を護るため、龍脈を制御しようという者達も多い。あえて前世の力を使わずに人として制御を試みるもの、逆に前世の力をいっぱいに引き出して対応しようという者など方法は様々である。そしてある数学教師はその能力をフルに使い、龍脈の核となる場所を導き出した。

 目の前で叔父の宗一を喪った井上尚の心を開くべく、前世の力で宗一をよみがえらせた者もいる。そして再び宗一を害そうとする者も。事件の中心人物であった尚の周辺では様々な争いが起きる。

 同じく前世の事件の中心人物だった横田朝香の死を無かったことにしようという者達もいた。彼らはチャーチワードの力を朝香に与え、祈り、そして蘇らせた。

 覚醒し、実体を失いながらも龍脈の流れに溶け込むことで操ろうという者もいる。解放したい者、制御したい者それぞれが龍脈内部でもせめぎ合う。

 前世の力で「草薙の剣」を産み出した者は、龍脈を不安定にさせている原因である雫の宮学園の校舎を消滅させた。そして復活した朝香達の歌と、人々の祈りが龍脈を沈黙させた。

 そして、しばらく経った雫の宮学園では復興記念パーティーが開かれていた。前世の記憶も薄れつつある人々は、ふと誰かの声を聞くように感じることもあった。


今月の登場シーン:抜粋

「瑠璃さん……」
 やるせなく拳を握り固めた瑠璃の肩、野仲抽芽(のなか・ゆめ)はそっと触れた。
 瑠璃はその手た自らの手を重ね……その唇を奪った。
「……口直し。大目に見てよ、これくらい」
 そして、怒られる前に言い、笑んだ。
(みんなが幸せであるために、俺は俺にできることをするだけ)
 消える気は、ないのだ。だが……万一の覚悟は出来ているから。その覚悟を笑顔で隠した瑠璃、キスは柚芽からもらう餞別のつもりだった。
「この世界は好きですけど、それは瑠璃さんやみんながいるからです」
 ひた隠した覚悟、けれど、柚芽はそこに何かを感じたのか……怒る代わりに、その澄んだ茶色の瞳で瑠璃を見据えた。加賀見(かがみ)ではなく、野仲柚芽として生きたいから、生きていたいから……そして。
「みんなと一緒なら、きっとやっていけます。だから、わたし、無理する人は引っぱたいても止めようと思うんです」
 大切な人がいなくなるのは悲しいから……柚芽は言って、ニコリと微笑んだ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜中略〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「瑠璃さん、お疲れさまです」
 差し出されたジュース、疲労で座り込んでいた瑠璃は柚芽を見上げ、頼を緩めた。
「?……何ですか?」
「いや……こんな他愛無い日常が幸せだなあ、と思ってさ」
 薄れていく前世の記態と引き換えに、日々戻ってくる日常……その実感。
「ねえ柚芽さん、今度の日曜日……暇?」
 幸せをかみ締め、瑠璃は誘った。


 なんとか龍脈制御も完了して、後日談までおさまってます。最終回がダブルアクション気味になるのは仕方がないかな?

2002,03,25
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