その18
一時期ガラの掲示板でも話題になったファイブクヲーツについての考察です。
ファイブといえば、SEIKOが世に送り出した大衆機の代名詞ともいえるモデルです。
『5』の意味は、『耐震装置・防水・日付&曜日付・自動巻き』の5つの機能を表しています。
'60年代前半から様々な改良を繰り返し、多くの名機を搭載しながら
今に至るまさに『SEIKOの中のセイコー』と言える代表的腕時計だと思います。
で、下の画像をご覧下さい。
12時位置に誇らしげに付いているのは、紛れも無く『5盾』です。
が、6時位置に書かれている文字は、『AUTOMATIC』ではなく『QUARTZ』です。
前述の『5』の五つの機能では、自動巻きである事が条件となっています。
では、これは良くある(と聞く?)贋物でしょうか???
このブレスの刻印を見ても、間違いなくファイブクヲーツそのものであると思われます。
では、機械は何を搭載しているのでしょう???
Cal.5Y13Aと書かれたセイコー製の機械が搭載されています。
僅か(3石)ですが石も使われており、良き時代のクヲーツ・ムーブメントです。
このCal.5Y13Aという機械ですが、色々と調べましたが残念ながら詳細を知る事は
出来ませんでした。セイコー5Y系の機械は、5Y3*、5Y7*、5Y8*等を確認できましたが、
肝心の5Y13の情報は、手元にありませんでした。(泣)
ここからは推測ですが、Cal.5Y13Aは輸出専用の機械であったと思われます。
従って、このファイブ・クヲーツ自体も輸出専用モデルだったのではないでしょうか?
裏ブタの個体番号から考えると1985年製造であると思われますが、
当時の国内用カタログにもパーツリストにも、その存在はありませんでした。
さて、このファイブ・クヲーツを見てAoが思い出したのはタイプUクヲーツです。
亀戸のタイプUと諏訪のファイブ・クヲーツですが、側のデザインも
文字盤の雰囲気もかなりよく似た印象です。
もちろん、極めて王道的デザインですから似ていると言うのも不自然ですが…。
1979年製のタイプUクヲーツ:7123-7000と比較してみましょう。
次に機械を比べて見ましょう!
Cal.5Y13とCal.7123では、見た目も大きさも激しく違いますね。
クヲーツの大衆機とも言えるタイプUクヲーツ(7123)ですが、
流石に'70年代前半の設計である事が、隠しきれないプリント基板が微笑ましいです。
さて本題に戻りますが、このファイブクヲーツはどの様なモデルなのでしょう?
『5』のお約束機能である自動巻きで無い事は、裏切りなのでしょうか???
ファースト・ファイブが世に送り出された1963年には、クヲーツが腕時計の主流になるとは
予想されていなかったと思います(少なくとも、市場は…)。
すなわち、ファイブの謳い文句であった自動巻きの真意は、
『毎日ゼンマイを巻き上げなくとも確実に時を刻む』にあったと思われます。
ただ、当時の宣伝文句として表現すると、巻き上げ不要=自動巻きであった為、
お約束機能の一つが、自動巻きと表現されたダケであると思われます。
と言うことは、ファイブのお約束機能の本質は、自動巻きであることではなく
巻き上げ不要である事ではなかったのでしょうか?
巻き上げ不要≒電池駆動(クヲーツ)という公式が成立するとすれば
ファイブ・クヲーツは裏切りでも何でも無く、明らかな正統派ファイブであり、
ファイブの目指した姿の一つの答えであると言えます。
もちろん、恒例のガラ研の勝手な推測による考察ですが、
ファイブ・クヲーツの存在の事実紹介と意義について考えてみました!!
皆さんは、このファイブ・クヲーツをファイブと認めますか???
*** おまけ ***
ちなみに前述のファイブの贋物を、御参考までに紹介します。
海外から買ったガラ箱に転がっていたモノです。
文字盤のデザインをはじめとして、すべてが今ひとつの情けない仕上がりです。
ファイブの基本である日付&曜日表示も無く、SEIKOのロゴも5盾も
コピー製品とも言いたくないホドの寒い作りですね。(爆死)
裏ブタの表記のパターンは、セイコーと言うよりシチズンに近いモノです。
一見スクリュウバック風の切り欠きがありますが、全くのダミーで単なるスナップバックです。
しかも、機械はスカスカの空間に女持ちクヲーツ…。(怒)
皆さんもこの手の悲しい贋物には、引っかからない様に気を付けてくださいね。
まあ、間違えて買ってしまう様な仕上がりではないので、騙されないとは思いますが…。