その日、おぃら達はレムナントにいた。なんでも外界と隔絶されたこのあたりでは時間がゆっくり流れているらしいが、そんなことは知ったこっちゃねぇ。ただここにはかつては伝説と言われていた獣人族ユリシーズの民が住んでいる。そいつらとの交流と研究のために人が集まってきたのがこの町の始まりだってことだ。
それはともかく、いま世話になってるのは町外れの孤児院だ。宿が見つかんなくて、子分に「なんとかしろ」っていったら見つけてきたんだが、どうもここの院長もちょっとお人好しというか、やり手というタイプにはみえないからな・・・。金銭的にも苦労してるらしいのに妙なやつがけっこう滞在してる。その日も森の中で大怪我して倒れてたって二人が運び込まれてきた。
そいつらの片方、アズパールとかいった方は口ぶりからするとどこぞの騎士さまらしいが、やっぱりちょっと変な感じの奴だったな。もう片方の奴は、おぃらでも噂は聞いてる。角の付いた黄金の仮面をかぶってるやつなんてそうそういないからな。かつてレムナントで猛威を振るったというセロー団の大首領、セロー・サラスティアリに間違いねえ。そいつがなんで森で倒れてたかはよく分んねえが、おかげで面白いものも見せてもらったな。
あいつらが運びこまれた日は、どうにも資金繰りに困った院長は以前からの貴族の申し出を受けようということで、リーナって娘が「売られる」日だったんだ。確かに顔のワリにイイカラダしてたからな。道楽貴族が目をつけても無理はねぇ。それでおぃらが「横取りしたいぐらいだぜ」っていったら、セローのやつがぽんっと手を打ってとび出しちまってな。なにをするかと思ったら「ちょぉぉぉぉっと待つのである!その娘は我輩がいただくっ!これでっ!」といったかと思うと、どうやって稼いだのかは知らねえがマントの下から札束コロコロと出しやがった。まあそれであっさり転ぶ院長もなんだが・・・ともかくリーナはセローが有り金はたいて連れていっちまったってわけだ。いや、その時の貴族の顔はまさに「開いた口がふさがらない」ってやつだったな。
その後、面白そうだったんでセローのやつをつけてみたんだが、どうやらあいつは森で獣人に襲われたらしい。妙な仮面のせいで悪魔に間違われたらしいが、間抜けな話だぜ。それに例の金も出稼ぎで溜めた軍資金らしく、それに話が行きそうになったら必死でそらしてたな。どうもあいつについていったら面白いことになりそうだぜ・・・。