多神教世界の霊魂観
 科学的唯物論の優勢な現代、多神教世界においては、日本人に典型的なように、一般大衆にとって宗教性は薄れ、ある意味で伝統的風俗、年中行事という観を呈しているでしょう。しかし、一元的に原理化された思想的な面は現代世界に大きな影響を与えているようです。
 一元思想によって統一された多神教は一元多神教と呼ばれます。原始的シャーマニズム・アニミズム時代の汎神的信仰(汎神的というのは適当な表現ではないようで、汎霊的のほうがいいでしょう。しかし今はこのままにしておきます)を否定することなく、創造原理のもとに統一したものですから、原始宗教的な面を色濃く残してい、思想や信仰のスタイルも様々でお互いに混合している面もあります。思想としては一元ですが、宗教的には一元性は薄く土俗的な多神性が強いでしょう。思想と大衆信仰の関係は、「原理は人間の心に仮象として現れる」ということのようです。思想という面では現世否定的ですが、一般大衆の宗教としては来世志向より現世利益的です。
 一神教の宇宙は神の創造の一点ですから、世界の終末の後に作られる天国と地獄そして現世だけで単純ですが、多神教の世界は曼荼羅宇宙、多様で多層です。また、現実と表裏一体に存在すると考えられます。
汎神的信仰
 一元多神教でもっとも有名なのはヒンズー教です。ヒンズー教は思想的には一元的創造原理・創造神を持つ典型的な一元多神教といわれます。人間の魂に神性を見ます。
 仏教、道教も一元多神教ですが創造原理、創造神を否定しています。思想的には生成・展開原理を持っているといえるでしょう。しかしその一元は「無差別」、「無為」、あるいは「混沌」と呼ばれますから、その世界は中心を持たないもののようです。それゆえに基本的に人間の魂にも特別なものを見ません。
 仏教、道教の受容によって成立した日本の仏教と神道ですが、一元性はあまり重要視されないようです。特に祖霊信仰的な面が強いようです。汎神教ともいわれますが、アニミズム・シャーマニズム的世界観をそのまま残しているといっていいでしょう。
  (特殊な教団として、同じアニミズム・シャーマニズムの延長にあっても、霊物二元の思想を信奉するジャイナ教は創造神も神々も持ちません。人間に知的霊魂を見ます。ギリシャ思想、アリストテレスに近い思想的な宗教です。)

 日本では唯一絶対神教に対する多神教優位論が唱えられていますが、寛容性や攻撃性などという不毛な精神論が主で、思想的な面での比較検証は行われていません。
 思想において優劣論議は無意味です。人種問題、性別問題、障害者問題などに見られるように、人類は今や優劣論を脱却しつつあるのです。物事は相対的に見なければならないでしょう。宗教思想も相対的な視点から、その本質、差異、個性を見るべきでしょう。
 多神教における宗教思想の特徴は自然環境を反映した霊魂観の違いにあると思われます。
 インド、中国、日本、それぞれの霊魂観における差異を見てみたいとおもいます。
ジャイナ教
インド霊魂

中国霊魂

日本霊魂